芸能

『半分、青い。』北川悦吏子氏、命がけの脚本と仏心と迷い

最終週の展開に迷いが出たと話す北川さん(撮影/萩庭桂太)

 やさしいそよ風が吹く扇風機を作っているうちに、鈴愛と律は自分の気持ちに気づき始める。本当にいちばん大切な人って──。半年間続いたNHK連続テレビ小説『半分、青い。』が9月29日に最終回を迎える。最終週の脚本は、収録直前まで悩み抜いたと脚本家・北川悦吏子さん(56才)は明かす。

「展開はすでに決まっていたんですけど、いざ書こうとしたら迷いが出てしまって…。あまりに衝撃的なので怖くなり、自分自身に対してひよってしまったんです」

 登場人物を愛しすぎたから、かわいそうになって仏心が出た。それが迷いになったのだと北川さんは言う。別の脚本を用意して制作スタッフにも相談した。北川さんはそのときどきのリアルな言葉を文字にして残してきた。自身の闘病中、痛みにのたうち回りながらも、薬の袋に思いついたせりふをとどめたこともあった。せりふを書く上で常に考えているのは「このシーンでいちばん強烈な、心に残る、刺さる言葉を選ぶ」こと。それは『半分、青い。』でも同じだった。

 朝ドラ『半分、青い。』を書く──それは北川さんが「どうしてもやりたい」仕事だった。決心したのは、5年前の2013年6月30日。

「NHKの担当者にメールを送ったんです。『このままだとタイミングが見つけられないまま言えずに終わるから、勢いに乗って言います!』と。自分の体調や時期を考えていたら、ずっと『やりたい』と言えずに終わってしまう気がして。けっして病気が治ったから挑戦したわけではないんです。やるなら『今だ!』と思った」(北川さん、以下「」内同)

 そして2018年元日。北川さんは年賀状にこう記した。

「今年、4月2日から、NHK朝ドラ『半分、青い。』が放送されます。私の命がけの作品です。どうぞ、ご覧ください」

『半分、青い。』は岐阜県で生まれ育ち、子供の頃に病気で左耳を失聴したヒロイン・楡野鈴愛(永野芽郁・18才)が、漫画家を目指して上京しデビューを果たしたが、挫折。結婚して出産するが、離婚…と、挑戦と挫折を繰り返しながら、高度成長期の終わりから現代までを駆け抜けるという物語だ。

『愛していると言ってくれ』、『ロングバケーション』、『ビューティフルライフ~ふたりでいた日々~』など数々の恋愛ドラマを世に送り出し「ラブストーリーの神様」といわれる北川さんが朝ドラを手がけることは、放送前から大きな話題となった。

 鈴愛の左耳が聞こえないというのは、北川さん自身が2012年に左耳を失聴した経験がベースにある。

「片耳失聴というのが企画の肝。この設定を発表したら “また北川さんはハンディキャッパーものを書くのか”と言われるだろうな…と覚悟していました。でもハンディキャップがあるからこそ朝ドラで堂々とやりたかった。もちろん、脚本家として、もっとも過酷な枠であることは承知していたけれど、命がけで書くのなら、自分がいちばん書きたいもので挑戦したいと思ったんです」

※女性セブン2018年10月4日号

関連記事

トピックス

羽生結弦が主催するアイスショーで、関係者たちの間では重苦しい雰囲気が…(写真/AFLO)
《羽生結弦の被災地公演でパワハラ告発騒動》アイスショー実現に一役買った“恩人”のハラスメント事案を関係者が告白「スタッフへの強い当たりが目に余る」
女性セブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
『ここがヘンだよ日本人』などのバラエティ番組で活躍していたゾマホンさん(共同通信)
《10人の子の父親だったゾマホン》18歳年下のベナン人と結婚して13年…明かした家族と離れ離れの生活 「身体はベナン人だけど、心はすっかり日本人ね」
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
川崎春花
【トリプルボギー不倫の余波】日本女子プロ2022年覇者の川崎春花が予選落ち 不倫騒動後は調子が上向かず、今季はトップ10入り1試合のみ「マイナスばかりの関係だった」の評価も
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
「中野駅前大盆踊り大会」前夜祭でのイベント「ピンク盆踊り」がSNSを通じて拡散され問題に
《中野区長が「ピンク盆踊り」に抗議》「マジックミラー号」の前で記念撮影する…“過激”イベントの一部始終
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
川崎市に住む岡崎彩咲陽さん(当時20)の遺体が、元交際相手の白井秀征被告(28)の自宅から見つかってからおよそ4か月
「骨盤とか、遺骨がまだ全部見つかっていないの」岡崎彩咲陽さんの親族が語った “冷めることのない怒り”「(警察は)遺族の質問に一切答えなかった」【川崎ストーカー殺人】
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン