「この乱闘どこかで……」と思い出したのが、TOKIOが司会を務めたリアリティ番組『ガチンコ!』(TBS)。その名物企画、『ガチンコファイトクラブ』の絵面にそっくりなのだ。
トレーナー・竹原慎二役が正論を吐く長山ディレクター、竹原シンパの第一期生役はハト胸、全てに反抗する第二期生役がでっぱりんといった具合か。戦いの構図まで似ている。
理解されないことに苛立つでっぱりんは、最終的にデパートでオモチャをねだる子供のように床にひっくり返り地団駄。久々にマジギレする大人をまじまじと見た。そして、悔しいが確かに面白いのだ。
このシーンの衝撃は大きい。視聴者に「『あいのり:Asian Journey』で一番心に残ったシーンは?」と聞けば、90%以上の人がこの乱闘シーンをあげるだろう。シーズン1において、暴力描写はこの回しか登場しない。しかし、恋じゃ太刀打ちできない衝撃があった。
そして、今年11月『あいのり:Asian Journey』のシーズン2の配信がスタート。シーズン1のメンバーも希望者のみ引き続き参加。シーズン1でカップルになったでっぱりんも即急に別れたらしく推参し、再びラブワゴンのエンジンが動き出したのである。
シーズン2第1話の終盤、シーズン1から引き続き参加する22年間彼氏がいないユウちゃんと、29年間彼女いない新メンバー勇ちゃんの恋愛模様が描かれた。これぞ!『あいのり』といえる光景である。
スタジオトークに戻り、ベッキーらしい安パイな総評。そのあとに挿入されたのが、今後のシーズン2の見所をまとめた予告映像。これがもうスゴかった!
少々の恋を映したのち、残りは全てバイオレンス。「お前、おかしいやろ!」とメンバーにケンカキックをかますでっぱりん、スタッフと揉みくちゃになるでっぱりん、そして「マジで痛い」と倒れるでっぱりん。
そこで僕は、かつての恋愛バラエティー番組はもうないんだと確信。今の『あいのり』は暴力紀行を楽しむ番組と化している。しかも、それをスタッフが視聴者への惹きとして効果的に使うからエグい。
シーズン2第6話「愛と哀しみのカトマンズ」にて、予告映像で流されていたバイオレンス描写の本編が遂に封切られた。酒に酔ったでっぱりんが「自主性がない」とユウちゃんを折檻、そこからメンバー、スタッフ入り乱れての「ガチンコファイトクラブ」状態ふたたび。「あなたは男と女の修羅場を見たことありますか」というタイトルバックをキッカケに20分以上、大乱闘シーンが配信された。
ケンカを求めてでっぱりんを再キャスティングしたスタッフの味を占めた顔が浮かぶ。「計画通り」と心の中ガッツポーズしただろう。しかし、それは「あいのり」じゃなくて「わるのり」だ。
時代に合わせて刺激物が足された『あいのり:Asian Journey』。スタッフが視聴者の期待に応えた結果、なんともいえない混沌とした番組へと仕上がっていた。そして事実、でっぱりんのケンカで番組は話題となっている。ひとまず、恋と旅とバイオレンスな『あいのり:Asian Journey』は成功中。今後はわからないけど……(Netflixにクレームきてそう)。