今冬スタートのドラマで「劇作家」と言えば、『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK)の脚本を手掛ける宮藤官九郎さん(48歳)を思い浮かべた人は多いのではないでしょうか。宮藤さんは、現在こそ映像作品を手掛ける脚本家のイメージが強いものの、もともとは所属先の劇団「大人計画」を筆頭に多くの舞台を手掛ける劇作家です。

 現在ドラマの脚本家は50~60代のベテランが中心で、たびたび高齢化が叫ばれていますが、各局に若手をじっくり育成する余裕はなく、「実力派の劇作家を発掘したい」のが本音。今回の4人は実績もセンスも十分だけに、宮藤さんのように国民的ドラマの脚本を手掛ける可能性を秘めています。

 ただ、劇作家と脚本家には、それぞれ長所と短所があり、上下や優劣はありません。一般的には「より多くの人々に見てもらえてお金が稼げる脚本家のほうが上ではないか」と思われがちですが、「自分のやりたいものを作・演出できる演劇のほうがいい」「局やプロデューサーの意向に基づいて書くドラマは物足りない」という劇作家も少なくないのです。

 2017年に放送されたドラマ『下北沢ダイハード』(テレビ東京系)は、「11人の劇作家が1話ずつ脚本を担当する」という斬新な試みで大きな注目を集め、ドラマ業界での評判も上々でした。その他でも、「20~30代の若手劇作家を発掘しよう」という動きがいくつか見られるだけに、今冬の4人はもちろん今後も劇作家の起用は続いていくでしょう。

 数年後、ドラマの脚本家として宮藤さんと比べられるほどの劇作家が誕生していても不思議ではないのです。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

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