美智子さまの教育方針の1つに、「一度決めたことは最後までやり抜く」というお考えがあった。皇太子さまが4才10か月を迎えた頃、天皇陛下が演奏されるチェロの音色を聞いた皇太子さまが、「同じようにチェロを弾きたい」とおねだりをなさったことがあったという。
しかし、まだ体の小さい皇太子さまにはチェロは難しいと判断された陛下が、バイオリンを勧められた。練習へ通う皇太子さまだったが、なかなか思い通りにいかず、何度も投げ出しそうになると、稽古には美智子さまが付き添われ、その姿を見守られたという。
何事も最初から思い通りにはいかない、楽しめるようになるまでには苦しい時間を乗り越える必要があるということを、幼い皇太子さまはバイオリンの練習を通して学ばれたそうだ。
近年も、学習院OBによる定期演奏会に毎回のように出演されている皇太子さまだが、かつてのバイオリンではなくビオラを演奏されている。父の背中を追い、オーケストラの中でも「縁の下の力持ち」と呼ばれるビオラを優雅に演奏される皇太子さまの姿には、美智子さまも頼もしさを感じられていることだろう。
さらに、皇太子さまが学習院初等科の頃、東宮御所に招かれた友人とのこんなやり取りから優しいお人柄がうかがえる。
庭で遊んでいた友人が水たまりでびしょ濡れになったので、御所で着替えをさせたのだが、迎えに来たその友人の母親に、『みんなと遊んでいて落ちてしまったんです。そんなことしなければよかったのに、ごめんなさい』と皇太子さまが自ら謝られた。帝王教育を受けられているとはいえ、なかなか小学校低学年の児童ができることではない。
無私で紳士的な振る舞いは、学習院大学文学部に進まれてからも目撃されている。大学の同窓だった女性は、「学食でのお姿をよく覚えています」と振り返る。
「殿下がよく召し上がっていらっしゃったのはカレーライスです。当時の学習院の食堂では、食べ終わった食器をシャワーで洗って返却する仕組みでした。シャワーと言っても、パイプに穴が開いた程度のもので、水圧も弱く、ほとんどの学生はササッと濡らす程度でしたが、殿下は丁寧に汚れを落とすまで返却されませんでした。
多くの学生とエレベーターで乗り合わせた際も、殿下がボタンを押して『どうぞお先に』と他の人を優先される。まるで“エレベーターボーイ”のようなことを自然にされていました。キャンパスで見かける殿下の、つねに上品でジェントルマンな姿は強く印象に残っています」
学生時代の皇太子さまはカラオケに興じることもあり、佳山明生の『氷雨』が十八番だった。ご学友に、ご自身が“ファン”の柏原芳恵の曲を「歌ってほしい」とリクエストされることもあったという。
※女性セブン2019年4月25日号