溝口:暴力団が取り締まり強化を恐れているのは間違いない。前回の東京五輪が開催された1964年に、警察による「第一次頂上作戦」(暴力団壊滅作戦)が始まっています。主に関東の暴力団が対象とされていたので、警察は東京五輪を意識していたはずです。
鈴木:当時は今と違って、ヤクザが堂々と建設業をしていましたからね。
溝口:1998年に長野五輪が開催された時には、風営法の改正が行なわれました。無店舗型が届け出制になって、デリバリーヘルスが解禁された。繁華街に目に付く風俗店は置かない代わりに、行くなら無店舗型で勝手にやってよという方針転換があった。これもヤクザ対策ですね。
鈴木:今回も相当外国人が来るはずだから、ビジネスチャンスになりますよね。
溝口:東京五輪に来る外国人観光客の目的は、当然、観戦だけじゃない。たとえば、AV女優を100万円出しても抱きたがるなら間を取り持ちましょうと、そういうサービス提供はヤクザの仕事ですね。
鈴木:インバウンドにはヤクザも期待しているはず。
溝口:今、当局が懸念しているのは、民泊にヤクザが食い込んでくること。そこで売春を斡旋するということが広がるんじゃないかと。
●みぞぐち・あつし/1942年東京浅草生まれ。早稲田大学政経学部卒。『食肉の帝王』で講談社ノンフィクション賞を受賞。『暴力団』、『山口組三国志 織田絆誠という男』など著書多数。
●すずき・ともひこ/1966年北海道札幌生まれ。『実話時代』の編集を経てフリーへ。『潜入ルポ ヤクザの修羅場』など著書多数。近著に『サカナとヤクザ』、『昭和のヤバいヤクザ』。
※週刊ポスト2019年5月3・10日号