皇室ジャーナリストの久能靖氏は「象徴天皇の在り方を突き詰めてお考えになってのことでした」と話す。
「天皇の務めとは、シンボルとしてただ存在することではなく、苦しむ国民にいち早く寄り添うこととの思いから、すぐにお見舞いに行かれたのです」(久能氏)
体育館の床に膝をつき、被災者と同じ目線で励ます姿が話題となった。
「こうしたお姿は、昭和天皇の時代には考えられないことでした。当時は批判もありましたが、陛下はご自身の信念に基づき、国民と共に歩む姿勢を貫いてこられました」(久能氏)
両陛下は被災地に幾度も足を運び、戦没者への慰霊を重ねてきた。毎年の地方公務「三大行幸啓」に合わせて視察することも多く、福祉施設をこれまでに500か所以上訪れている。
「両陛下は訪問された先々で、寸暇を惜しんで多くの人に会い、沿道の人々の歓迎にお応えになりました」(山下氏)
昨年12月、天皇としては最後の誕生日会見で、陛下は国民への感謝の思いをこう述べられた。
「天皇としての旅を終えようとしている今、私はこれまで、象徴としての私の立場を受け入れ、私を支え続けてくれた多くの国民に、衷心より感謝する」
※週刊ポスト2019年5月3・10日号