また、一旦養子縁組をすると、解消する場合には同意が必要です。同意がないときには、裁判上の離縁も可能ですが、離婚の場合とほぼ同じ条件が必要となります。すなわち、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、縁組を継続しがたい重大な事由のどれかが必要です。
メリットは、その裏返しになると考えればよいでしょう。あなたが将来扶養を必要としたとき、養子に求めることができます。ただし、高齢者の扶養は未成年者を扶養する場合のように、自分の物も分かち合うという、いわゆる生活保持義務ではなく、生活にゆとりがある範囲内で扶助すればよい生活扶助義務にとどまるとされています。それでも、養子縁組がない場合と比べてマシです。
次に、養子はあなたの相続人になります。子がいない場合、妻とともに親や兄弟が相続しますが、養子にすれば、その子と妻が、あなたの財産をすべて相続します。そもそも成人になっている娘さんが養子になることを望むか疑問です。損得よりも、親子の情愛がもてるかどうかが大事なように思います。焦らずに、熟考した上で判断されたら、いかがですか。
【プロフィール】竹下正己●1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2019年9月20・27日号