「私は年間100人以上の死亡診断書を書きますが、その半分ほどに記入するのが『老衰』という二文字。一般のかたが持っているイメージとそう変わらず、みなさん寝ている間に亡くなったり、眠るように逝きます。もがき苦しんだりするような人はほとんどいません」(長尾さん)

 つまり、老衰は理想の死に方の“ピンピンコロリ”に近いといえるだろう。

 一方で、「老衰がすべて安らかな死だというわけではない」という意見もある。昭和大学病院緩和医療科の診療科長を務める医師の岡本健一郎さんの話。

「基本的には脳をはじめとする全身の機能が低下し、苦痛を感じないで眠るように亡くなることが多いようです。しかし、まったく苦痛がないかというと、そういうわけでもない。たとえ大きな病気にかかっていなかったとしても、体力が落ちた高齢者は便が出ないだけでも苦しい思いをします。つまり、ケースバイケースなのです」

◆「救急車の中は、阿鼻叫喚の世界です」

 どんな最期になるかは人それぞれだが、病気で壮絶な最期を迎えるよりは、苦痛も軽減されるようだ。

 では逆に、どんな死に方が苦しいのだろう。救急救命士としてさまざまな現場を目撃してきた日本救急救命士協会会長の鈴木哲司さんはこんな証言をする。

「重病人やけが人などを搬送する救急車の中は、阿鼻叫喚の世界です。私が知る限り、病気の中で特に苦痛が強いものは『くも膜下出血』でしょう。これを“痛みの王様”と呼ぶ医療関係者もいるほどです。

 また、『解離性大動脈瘤破裂』を起こすと胸や背中に杭を打たれるような激痛が走るといわれ、あまりの痛みに意識を失ったり、ショック状態に陥る人もいます。心筋梗塞は火箸で刺されたような激痛が走るともいわれ、かなりの痛さだとされます」

 山野美容芸術短期大学客員教授で医学博士の中原英臣さんも、「心筋梗塞は“こういう死に方をしたくない”と思う病気のナンバーワンです」と声をそろえる。

「もちろん、痛みだけで考えたら骨折や痛風の方が痛いかもしれません。しかし、心筋梗塞の痛みや衝撃は、死の恐怖を伴います。恐怖の苦しみを伴う痛みは、想像を絶するものなのです」(中原さん)

※女性セブン2019年10月10日号

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