余った時間を使い、『上九の湯』で温泉に浸かると、太川が「美里ちゃん、相当カリカリきてるね」とボヤく。すると、蛭子が「女の人の言うこと聞いといた方がいいよ。だいたいね、喧嘩にはならんし」となだめるシーンもあった。

 ようやく到着した甲府駅のバス案内所では、太川以上に、宇垣が地図を見ながら積極的にスタッフに質問を繰り返していく。

 太川もイライラが溜まっていたのだろう。2人の話を把握しきれず、スタッフに「丘ってことは今、歩く話ですか? どこを歩く?」と尋ねた時のことだった。宇垣が「歩くとすると、おそらくですけど、この辺かな」と説明しようとすると、太川が「君ちょっと待て」「君は待ちなさい」と静止。画面から緊張感が漂った。このシーンこそ、予定調和のない『バス旅』の真骨頂だ。

 甲府駅から韮崎駅行きのバスに乗ると、最後列の窓側に座った蛭子は隣の宇垣に「席替わる?」と提案。「前方に座る太川の拡げる地図が見えにくそうだから」と理由を述べた。優しい……と思いきや、蛭子は穏やかな口調でこう言った。

「(太川と)対決した方がいい。とにかく(自分と席を)替わった方が面白くなりそうやから。意見が違うから」

 以前は「旅館には泊まりたくない」と言い出すなど傍若無人ぶりを見せていた蛭子だが、最近はけしかける側に回って存在感を示している。

 こうして、『旅バラ』史上最高の8.1%を獲得。特に衝突のなかった7月25日、10月9日の『バス旅』が6.3%だったことを考えれば、視聴者にとって“人が揉めて自分に関係ない”状態が生まれるかどうかは、数字に大きく関係しているのだ。言い換えれば、テレビ番組は人気タレントの“足し算”ではなく、組み合わせの妙から生まれる“掛け算”が視聴率に繋がるのだろう。

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