インタビューに答えるケネス・ルオフ氏(撮影:太田真三)

──日本人の間では、昭和天皇の崩御と平成の始まりで戦前と戦後を分けるような感覚がありますが、海外では明仁上皇の退位によって、ようやく日本のイメージが変わったということですか。

ルオフ:海外ではそうです。昭和天皇が亡くなったとき、海外、特にアジアでは、新天皇のことより、“第二次大戦中の天皇”“植民地時代の天皇”が亡くなったと大々的に報道されました。負のイメージが掘り起こされたのです。研究者は別にして、海外の人々は常に日本に興味をもっているわけではなく、ごくたまに報じられる日本のニュースを見て、情報をアップデートするだけです。

 明仁上皇が退位されて、それが海外で報じられ、「平成の天皇は平和主義者だった」「アジアへ慰霊の旅に何度も出かけた」と伝えられて、初めて「日本は平和を重視する国になった」と印象を変えたのです。上皇が退位されたたときにNHKにコメンテータとして出演したんですが、海外からSNSを通じて、「日本が帝国主義ではなく平和主義の国であることがやっとわかった」といったメッセージが届いていました。

 日本人からすると、「戦後70年も経つのに、なぜ天皇・皇后(現上皇・上皇后)はいまだに海外への慰霊の旅に出られたり、平和が大事だと言い続けたりするのか」と不思議だったかもしれませんが、上皇・上皇后は自ら退位したときに海外でどう報じられるのかを意識して、こうした努力を続けてきたと私は考えています。

──そこへ国家神道がまた顔を出すのは、決していいことではないと。

ルオフ:今の日本は国家神道に支配された国ではありませんが、そういう誤解を受けかねません。大嘗祭は、もっと歴史を遡って、昔の形に戻すのも一つの手だと思いますが、神道の儀式である点についてはやはり引っかかりを覚えます。

 日本人のなかには、「神道は宗教ではない、風習や習俗のようなものだ」と言う人もいますが、私はそうは思いません。少なくとも外国人の目から見れば、神道は立派な宗教です。天皇は神官であり、神道の儀式をするのは当然で、それをやめろなどと言うつもりは毛頭ありません。ただ、天皇の宗教的な側面があまり強調されるのは、いいこととは思えません。大嘗祭は毎年やるような儀式ではないので、そんなにうるさく言う必要はないのかもしれませんが、戦後日本に合わせた形にしたほうがいいように思います。

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