◆英語民間試験は「格差」を広げるか
──しかし、民間試験は裕福な家庭の子は何度も受けられて有利になるとの批判がある。
鈴木氏:何度も受けらないようにするために共通テストの枠内としました。国が認定に関与できる共通テストの枠内とすることで、受験回数制限をつけることができた。
入試に民間試験を導入している大学数も全体の3割となっていましたので、スピーキング試験の普及のやり方の一つの選択肢として、共通テストの枠組みではなく、生徒が自由に民間英語試験を受け、それぞれの大学が民間の検定機関から受験生の情報を得て合否判定に活かすという方式を、奨励・促進するという方法もありえました。私も当初それがいいと思っていました。今となってはやはりこの選択肢を進めていればよかったと後悔していますが、そうしなかったのは、この方法だと、まさに裕福な家庭は何度でも受けられてしまい、受験回数制限をかけられないからでした。大学入試センターから民間に委託して実施する形にすることによって、回数制限をできるようになりました。
試験受験の格差を問う前に、すでに裕福な家庭の子供との英語教育格差が開いてしまっています。高校・大学を通じて、短期・長期の留学をしている生徒も増えています。さらに、都会の私立高校も英語教育には熱心に取り組んでいるところも多いし、都会の裕福な家庭ならば、4技能を磨くために家庭教師や塾や何でも可能です。一方、公立高校では3割しか、4技能の教育をやっていません。スピーキング充実のための外国人教員の補充もままならない。本当は、今回のことをきっかけとして、公立高校でも4技能の授業が一挙に増えて、状況が大いに改善される予定でしたが、それもできなくなりました。
──地方では受験会場が少ないから「地域格差が広がる」という批判もある。
鈴木氏:民間試験の会場については、センター試験を実施していない27か所の会場が追加で発表されています。センター試験より会場が多く、むしろ地域格差を解消しているのです。たとえば、鹿児島県の島嶼部では、奄美大島でしかセンター試験は実施されていませんが、民間試験は、奄美大島以外に、種子島、屋久島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島で実施される予定でした。秋田県では、由利本荘、大仙、横手、湯沢などが追加されている。現地の教育委員会や校長会が熱心に取り組んでいるところは数が増えていますし、地方の教育委員会や校長会は、生徒たちへの協力を惜しんでいませんでしたので、さらに増える予定でした。できれば、それがもっと早くアナウンスされていればなあと悔やまれます。