最近の視聴者は、芸人を含めたタレントに「いい人」「悪い人」とジャッジを下すことを好む。前者と思われる方が得、タレントは自らを「いい人」として演出する。僕はこの一連の流れがテレビをつまらなくさせたと思う。直接、危害を加えてくるわけでもないタレントに良心を求めるのはナンセンスだ。勝手に「いい人」だと思い込み、裏切られたから怒る視聴者もおかしい(安易に「いい人」をやるタレントも確かに罪深いが)。
普通に生きていればわかるが、シーンによって「いい人」は「悪い人」にも変わる。逆もまた然り、タレントを「いい人」か「悪い人」で測ることがそもそもの間違いだ。
千原せいじは不倫騒動を週刊誌の記者に直撃された際、「俺はやっぱり、女にモテるために芸能界に入ったみたいなところもある」と語った。
ある程度の地位を掴んだ芸人は自らが品性を持っていることを演出しがちだ。不倫をした際のコメントが白黒はっきりしないこともある。対して、千原せいじはコレ。芸人になった瞬間から今まで、ポリシーが一切ブレていないとわかる。身の丈以上に自身を演出しない潔さは、男の僕でも惹かれるものがある。
千原せいじはどんなシチュエーションでも変わらない稀有な人である。舞台がテレビからYouTubeになっても、直撃取材されても同じ。一連の不倫騒動とYouTuberとなった千原せいじを観て、首尾一貫した生き様を再確認した。タレントでありながら、これだけ強気に「いい人」を放棄できたのならモテるに決まっている。
●ヨシムラヒロム/1986年生まれ、東京出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使。五反田のコワーキングスペースpaoで月一回開かれるイベント「微学校」の校長としても活動中。著書に『美大生図鑑』(飛鳥新社)