外務省は2016年9月、「国際交流基金の業務・組織全般の見直し」というリリースを発表し、〈対外発信強化や観光立国の実現、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた取組等、政策的要請に応じて国際交流基金に求められる役割が増大し、(中略)「放送コンテンツ等海外展開支援事業」等、新たな大型事業に取り組むこととなった〉とこの施策の意義を強調している。
ただでさえ五輪放送でバブル待ちにあるテレビ局にさらにカネを払うことが、対外発信強化につながるのだろうか。
テレビに予算を拠出しているのは外務省だけでなく、総務省は「4K・8K等最先端技術を活用した放送・技術分野の事業支援」で7億7800万円を拠出。うち、NHKの関連会社であるNHKテクノロジーズに3億9600万円が払われている。
超高解像度でテレビが見られる4K・8K衛星放送は2018年12月からスタートしているが、総務省は東京五輪関連施策として「大会と連携したICT(情報通信技術)環境の整備等」の一つにこの4K・8Kを掲げている。
水素は経産省と自動車業界、4K・8Kは総務省とテレビ業界……新技術の普及に向けて、五輪を利用したい霞が関と業界の構図が透けて見える。
●ふくば・ひとみ/1976年、広島県生まれ。同志社大学卒業、同大学院総合政策科学研究科博士課程前期修了。政策シンクタンクのスタッフ、経済誌の編集者を経てフリーに。『国家のシロアリ 復興予算流用の真相』で小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
※週刊ポスト2020年1月17・24日号