国内

武漢チャーター機で考察 自衛隊「邦人救出」の態勢を整えよ

中国・武漢市から日本人を乗せて帰国した政府のチャーター機(時事通信フォト)

 新型肺炎の脅威から現地の日本人を救ったチャーター機。しかし、深層にひそむ問題は大きい。作家・ジャーナリストの門田隆将氏が指摘する。

 * * *
「本当に飛んできてくれた。感謝しかなかった」──NHKニュースで紹介された武漢からの救出日本人の言葉が印象的だった。私は、これで日本も“普通の国”の仲間入りをできるのか、と考えた。それほど今回の出来事は、日本の邦人救出史に新たなページを刻むものだった。

 いうまでもなく国家にとって国民の命ほど重要なものはない。国民の「生命」、「財産」、そして「領土」を守れない国家に存在意義などないからだ。しかし、戦後日本はこの最も大切なものを守ることを「放棄」し、他国に「委ね」て存続してきた。「自国民の命さえ救えない」実に情けない国が日本なのである。

 今回の武漢からの邦人救出は、政府が国民の声に揺り動かされ、実行された。中国の影響力の強いWHO(世界保健機関)は、新型肺炎の実態を過小評価してきたが、その判断に従っていた日本の対策が「後手にまわった」のは、当然だろう。

 だが、外国の動きは素早かった。さすがに中国人を即座に「全面入国禁止」にした北朝鮮には驚かされたが、米国もいち早くCDC(疾病対策センター)を投入し、武漢からの航空便の乗客をそのまま別室に通して検査をおこなう水際作戦を採った。また、フィリピンは中国旅客機そのものを追い返し、台湾は団体客の往来を全面禁止にした。それぞれの国で独自に素早い動きを見せたのである。

 一方の日本はどうか。なんと武漢からの航空機内で体調に関する「質問票」を配布するという“対策”しか採らなかった。自己申告、つまり乗客の「良心に頼る」という危機意識ゼロの方針だったのだ。のちに彼らは搭乗前に解熱剤を服用して体温を下げ、サーモグラフィをすり抜けたことがさまざまな証言で明らかになった。そんな中で武漢からのツアー客を乗せた奈良の観光バスの運転手とツアーガイドが新型肺炎に罹患するという事態が起こった。

 日本のお粗末な“水際対策”は、今後「人災」として国民への惨禍と繋がっていく可能性がある。しかし、強い世論に押される形で、1月29日、安倍政権は全日空のチャーター機を武漢へ飛ばし、助けを待つ邦人を帰還させた。実際に飛んでくる機影を視界に捉えた救出を待つ邦人が「本当に飛んできてくれた。感謝しかなかった」と冒頭の言葉を発したのは当然だろう。

関連記事

トピックス

安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
「『あまり外に出られない。ごめんね』と…」”普通の主婦”だった安福久美子容疑者の「26年間の隠伏での変化」、知人は「普段通りの生活が“透明人間”になる手段だったのか…」《名古屋主婦殺人》
NEWSポストセブン
兵庫県知事選挙が告示され、第一声を上げる政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。2024年10月31日(時事通信フォト)
《名誉毀損で異例逮捕》NHK党・立花孝志容疑者は「NHKをぶっ壊す」で政界進出後、なぜ“デマゴーグ”となったのか?臨床心理士が分析
NEWSポストセブン
2025年九州場所
《デヴィ夫人はマス席だったが…》九州場所の向正面に「溜席の着物美人」が姿を見せる 四股名入りの「ジェラートピケ浴衣地ワンピース女性」も登場 チケット不足のなか15日間の観戦をどう続けるかが注目
NEWSポストセブン
「第44回全国豊かな海づくり大会」に出席された(2025年11月9日、撮影/JMPA)
《海づくり大会ご出席》皇后雅子さま、毎年恒例の“海”コーデ 今年はエメラルドブルーのセットアップをお召しに 白が爽やかさを演出し、装飾のブレードでメリハリをつける
NEWSポストセブン
昨年8月末にフジテレビを退社した元アナウンサーの渡邊渚さん
「今この瞬間を感じる」──PTSDを乗り越えた渡邊渚さんが綴る「ひたむきに刺し子」の効果
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《中村橋之助が婚約発表》三田寛子が元乃木坂46・能條愛未に伝えた「安心しなさい」の意味…夫・芝翫の不倫報道でも揺るがなかった“家族としての思い”
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
「秋らしいブラウンコーデも素敵」皇后雅子さま、ワントーンコーデに取り入れたのは30年以上ご愛用の「フェラガモのバッグ」
NEWSポストセブン
八田容疑者の祖母がNEWSポストセブンの取材に応じた(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
《別府・ひき逃げ殺人》大分県警が八田與一容疑者を「海底ゴミ引き揚げ」 で“徹底捜査”か、漁港関係者が話す”手がかり発見の可能性”「過去に骨が見つかったのは1回」
愛子さま(撮影/JMPA)
愛子さま、母校の学園祭に“秋の休日スタイル”で参加 出店でカリカリチーズ棒を購入、ラップバトルもご観覧 リラックスされたご様子でリフレッシュタイムを満喫 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、筑波大学の学園祭を満喫 ご学友と会場を回り、写真撮影の依頼にも快く応対 深い時間までファミレスでおしゃべりに興じ、自転車で颯爽と帰宅 
女性セブン
クマによる被害が相次いでいる(getty images/「クマダス」より)
「胃の内容物の多くは人肉だった」「(遺体に)餌として喰われた痕跡が確認」十和利山熊襲撃事件、人間の味を覚えた“複数”のツキノワグマが起こした惨劇《本州最悪の被害》
NEWSポストセブン
近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン