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2020.01.31 07:00  NEWSポストセブン

武漢チャーター機で考察 自衛隊「邦人救出」の態勢を整えよ

作家・ジャーナリストの門田隆将氏

◆現行では「救出」は事実上不可能

 2015年9月、安倍政権は安全保障関連法を成立させ、在外邦人の保護措置として自衛隊による「警護」「救出」が新たに可能となった。ただし、それには「領域国の秩序の維持」「自衛隊の保護措置への領域国の同意」「領域国の機関との連携・協力の確保」の3条件が必要とされたのだ。国会審議を経て、この「3つの条件」が課せられることが決まった時の自衛隊幹部の嘆きが忘れられない。「これでは、邦人救出にわれわれは向かえない」と。

 例えば、韓国で邦人救出が必要な事態が惹起されたことを考えてみよう。外務省の「海外在留邦人数調査統計」によれば、韓国に日本人は3万9778人(2017年10月時点)が居住している。およそ4万人だ。

 仮にここで戦争が勃発し、邦人救出が必要になった場合、この時の「領域国」は「韓国」ということになる。自衛隊が邦人救出をおこなう場合、韓国が「秩序を維持」しており、自衛隊の保護措置への「韓国の同意」があり、さらに韓国軍との「連携・協力」が確保されていることが条件ということになる。

 この3条件を韓国が満たしてくれる可能性はほとんどない。つまり、現地で救出を待つ邦人を自衛隊は「助けられない」のである。私はこのことを問題視し、「安保法制でも救えない国民の命」として記事や講演で訴え続けた。だが、日本人は、いざ“その時”が来なければ、この「重大な欠陥」に気がつかないのである。

 それから5年が経過する現在も、この「3条件」は変わっていない。私は2014年5月15日、安保法制懇(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)が出した報告書の文言を思い出す。報告書の30ページに書いてある以下の文言だ。

「憲法が在外自国民の生命、身体、財産等の保護を制限していると解することは適切でなく、国際法上許容される範囲の在外自国民の保護・救出を可能とすべきである。国民の生命・身体を保護することは国家の責務でもある」

 国民の生命・身体を保護することは国家の責務でもある──この当然すぎる文言を未だ現実化できず、今後、戦乱の中で見殺しにされる在外邦人の運命を思うと、私は耐えられないし、許せない。武漢からの今回の救出劇を機に、自衛隊が「助けを待つ邦人」の救出に向かえる態勢を一刻も早く整えることを私は強く提言する。(了)

【プロフィール】門田隆将(作家・ジャーナリスト)かどた・りゅうしょう/1958年、高知県生まれ。『この命、義に捧ぐ 台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(角川文庫)で第19回山本七平賞受賞。近著に『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』(角川文庫)、『新聞という病』(産経新聞出版)など。

 

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