マスク品薄をきっかけに広まったデマから、トイレットペーパーも店頭で品切れが相次いだ(時事通信フォト)

マスク品薄をきっかけに広まったデマから、トイレットペーパーも店頭で品切れが相次いだ(時事通信フォト)

◆マスク転売したけど、電突もリアル凸もないね

「俺がマスクに手を出したのは遅かったんだけど、それでも100万だからね。組織的にやってる奴はもっと儲かったんじゃない?」

 聞けば金田さん、オークションやフリマアプリではなく、堂々と自分のネット店舗で売っていたという。もちろんAmazonでも売っていた。それも住所など全部晒していたというから驚きだ。

「何を驚く必要があるの? みんなそうしてるよ、ほら、他のマスク出品者見てごらん」

 Amazonで高額のマスクを売っているカスタマーのプロフィールを見る。確かに住所、名前、屋号まで全部晒していた。もちろんこれをしないと参加資格がないし、全部偽名というわけにもいかないだろう。自宅バレとか、問いただす電話がかかってくる電話突撃、いわゆる電突(でんとつ)とか、怖くないのか。

「べつに違法じゃないからね、警察に捕まることはしてないから気にしないよ。ネットの正義厨なんてリアルじゃなんもできない。実際来ないもん。ぶつぶつ文句つぶやくだけ。いままで来たことないよ。文句のひとつもない」

 金田さんは自信満々に言い放ち、ストローも差さずにアイスコーヒーを一気飲みした。ついでに氷も一個口に含んでかじる。

「メールでたまに文句来るけどね、でもマスクで抗議はないな。オタクのほうがうるさいよ。フィギュアの箱のカドが凹んでたとか、アホか。外箱なんてただの梱包材だっての」

 オタクというのは金田さん、普段の転売対象は主にオタクやマニア向けの商品である。金田さん自身はオタクではないが、出版社、編プロ時代にアニメやゲームの媒体に関わっていたためオタク方面に精通している。

「定番の人気のゲーム機も美味しいけど、とくにアニメやゲームの限定グッズやフィギュアは利益率がいい。あれはそもそも数が限られてるからね、ごそっと買い占めて高値で売る。あとから欲しがる連中もいて、そいつらにはもっと高く売れる。同人誌は昔ほど稼げないからもうやってないけど、コミケの企業ブースの物販はグッズとか売れるんで並び屋使う。大儲けはできないけど、俺一人食ってくには十分だな」

 アニメやゲームのキャラクターの人形であるフィギュアは、元々生産数が少ない分、人気キャラクターの出来の良いものは高値で取引されることもある。

「フィギュアは男のオタク向けばかりだけど、女向けは限定グッズかな、とくに腐女子相手。あとコレクターが金に糸目をつけないドールだね。頭のでっかいBってやつと、Vが展開してるスーパーな人形。ドール販売やイベントの物販は並び屋を使うこともあるけど、他は基本的にネットで大量注文だ。大量と言っても卸しと取引するような量じゃないし、たかが知れてるけどな。もちろんアカウントも大量に持ってる」

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