館内はピーンと空気が張り詰め、呼び出しや行司の声だけが響く。会話どころか、咳払いも憚られる雰囲気のなか、炎鵬(前頭4)が逆転勝ちし、照強(前頭11)が仕切りで大量の塩をまく──普段なら大歓声の場面だが、当然ながら水を打ったような静けさのままだ。
館内の至るところに「関係者以外立ち入り禁止」の張り紙があり、親方衆とメディアの動線は全く異なる。
「各社、東西の通路に1人の記者を配すだけ。ミックスゾーンで力士と2mの距離を置いての取材になるが、お互いにマスク越しで声がよく聞こえない。これをスルーする遠藤(小結)のような力士もいる。審判部など各部署への取材は代表1社のみ。打ち出し後の理事長談話も電話による代表取材で、その内容が記者クラブに伝えられる。すべてのコメントが同じで、どの社の記事も似てしまう……」(前出の担当記者)
※週刊ポスト2020年3月27日号