ライフ

42歳の元コンパニオンがコロナ騒動の末に結婚を決意するまで

「子供部屋おばさん」ですねと自嘲しているが……

「子供部屋おばさん」ですねと自嘲しているが……

 好きなアイドルなど有名人が出演したテレビ番組や雑誌などを片端からチェックするだけでなく、コンサートツアーに何度も足を運び、イベントもこまめに通うようなファンの行動を「追っかけ」という。仕事や人生がいまひとつうまくいかないと鬱屈する団塊ジュニアやポスト団塊ジュニアを「しくじり世代」と名付けたのは、『ルポ 京アニを燃やした男』著者の日野百草氏。アイドルの「追っかけ」に全力で取り組むため結婚しないと宣言していた42歳女性が結婚すると決意したのはなぜかについて、日野氏がレポートする。

 * * *
「結婚しないとか子どもいらないとか、撤回します」

 舌っ足らずな口調ではにかみながらコーヒーカップのふちをなぞる後藤裕子さん(42歳・独身)。「しくじり世代」のその先として、子どものいない団塊ジュニアの取材で知り合った彼女だが、新型コロナウイルス騒動のさなか、相談に乗って欲しいと連絡があり、彼女の住む中目黒で落ち合った。駅前の再開発地区にあるゲートタウンは土曜日の日中だというのに閑散としている。みなマスク姿。ゲートタウン内のカフェも私たち以外お客はまばらで、店員も暇そうだ。

「だから、前に言ったことと違っちゃって、ごめんなさい」

 以前、後藤さんは好きなアイドルグループの追っかけがやめられないので結婚する気もないし、子どもを作る気もないと言っていた。ファン歴20年の筋金入りだ。その時は「生涯独身」と言っていたが、どうしたことか。

「私、仕事がなくなっちゃっうかもなんです。さすがに今回のコロナはつらいです」

 後藤さんは非正規のアルバイトで生活している。仕事内容はコールセンターのテレフォンアポインター。以前は官公庁や大手商社の事務をやっていたこともあるし、若いころはイベントコンパニオンもやっていた。

「コンパニオンと言っても私チビなんで、モーターショウとか華やかなキャンギャルじゃなくて、街でタバコを配ったり勧めたり、家電量販店で携帯電話のキャンペーンしたりとか」

 昔はタバコ会社のデザインをあしらった制服のコンパニオンがタバコを配ったりしていた。またスマホでなく携帯電話というのも時代だ。後藤さんも団塊ジュニアの女性として、1990年代のバブル崩壊とまだまだ社会が女性に理解のない時代を生き抜いてきたサバイバーのひとりだ。

「化粧品の美容部員もしました。ガールズバーのアルバイトもしたことがあります。ぜんぜん“ガール”じゃなかったけど(笑)」

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン