このように後藤さんは、嵐があればいい、ずっとそれで構わないと言っていた。ここまでが以前の取材で、結婚はもちろん子どもなんか考えられないし今さら……という話だったが、今日は違った。違うからこうして、あらためての話となった。

「コールセンターを運営してる会社が受託してるクライアント企業の生産が、コロナの影響でストップして、規模を縮小することになったんです。本当に急な話で、それも1社だけじゃなく何社も契約見直しや保留になって、うちのコルセン事業そのものがそのうち無くなるかもしれません。私も自宅待機になりましたが、もちろん1円も入りません」

 後藤さんも新型コロナウイルスによる一連の騒動の被害者となってしまった。罹患はしていないが、コロナによる事業縮小の余波は非正規である後藤さんをモロに直撃した。正社員なら当面の給料は出るが、非正規で仕事がないとなると無収入になってしまう。嵐の追っかけも厳しくなる。

「幸い、私は実家ですから生活に困ることはありませんが、この先どうなるかわからないじゃないですか。一人暮らしの人も実家に帰るって言ってます。で……私、結婚することにしました」

 いきなりそう切り出されてびっくりした。確かに以前の取材で付き合っている男性がいることは話していたがタイプじゃないと言っていた。父親の紹介で知り合った、都内で教員をしている30代の男性で、後藤さんにぞっこんだという。後藤さんは自分で「不思議ちゃん」かもと言っていたが、そういう女性は案外モテる。

「子どものことも考えるとラストチャンスですもんね、いい機会だと思います。両親も喜んでくれてます」

 私はおめでとうございます!と言った。高齢出産になるが今どきなら珍しくもない。私の妹も40代で出産している。その子もいまでは保育園に通う、プリキュア好きの元気な女の子だ。それにしても女性とはなんと強い生き物か。生存本能というか、こうして人類は女性の柔軟な発想と選択とで種を維持して来たのだろう。

「でも嵐ファンはやめませんよ。嵐は私の人生ですから」

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