僕は真っすぐとカーブしかなかったが、球種なんてふたつもあれば十分だった。ただ度胸もあった。オープン戦で投げた時に「プロでやれそうだ」と思ったし、一軍相手に「通用する」と思って投げているうちにあれよあれよと13連勝になった。どうせベンチは期待していないわけだし、開き直るしかなかった(苦笑)。
今年は佐々木朗希君と奥川恭伸君という有望な高卒ルーキーがプロ入りしましたね。佐々木君のような抜群に速い球が投げられればカネが稼げる選手になれる。一軍でも十分に通用すると思うが、問題は体力。僕はシーズンを通して体力的に問題はなかったが、それでも後半はバテバテだった。
故障があった奥川君は二軍スタートだが、これも正解。高校生の場合、2~3年は基礎体力造りをやる方が長持ちする。佐々木君はいまのまま突っ走って、壁にぶつかれば路線変更、あるいは何かをプラスすればいい。奥川君はじっくり鍛えて上を目指すべきです。
光るものが1つあればプロになれる。2個なら二軍、3個なら一軍、4個なら一軍で勝て、5個ならエースですよ。ルーキー時代の僕には4つあったんだと思う。コントロールは悪かったけれど、それさえも相手に恐怖を与える武器となった。佐々木君も速い球という武器があるのだから、開き直ってやればいいと思う。
あとONが同じチームだというのも大きかった。藤田元司コーチという指導者にも恵まれたし、川上哲治監督が根気よく使ってくれた。金田正一さんにも可愛がってもらった。いろんなことが積み重なって残せた結果だと思っています。
※週刊ポスト2020年4月10日号