ニューヨークで。インターネットをつないで、ヨーロッパとのウェブ会議も

 2008年には長男も生まれた。子供たちが通う幼稚園ではママ友やパパ友たちと行事に全力投球し、第二の青春をエンジョイした。だが、常に頭の中には仕事に復帰したいという気持ちがあった。

「当時はスマホの創成期。私も何か発信したい、とブログを開設しようとしたけど、アカウントすら作れない。専業主婦になって会社から離れたぶん、取り残されたのかなと思ったりもしました。ITには戻れないのかな…と」

 一方、靖隆さんは2009年に会社を退職し、IT企業・JOYZOを自ら立ち上げた。社員ゼロからスタートした会社は、時代の波に乗って急成長しつつあった。

 琴絵さんは2013年に3人目となる次男を出産した。同居していた義母が仕事を辞め、「育児への協力を得られそうだ」と思った彼女は、復帰を現実的に考え始めた。とはいえ、専業主婦10年間のブランクがある。最初は近所での時給1000円、週4日勤務のパートから始めた。

「サッカーユニフォームにゼッケンを圧着する仕事でした。ご飯を食べるヒマもないほど忙しくて5kgやせたけど、楽しかった。私にとっては、家庭を守り、子育てをすることももちろん大事なこと。そして、それと同じくらい、外で仕事をすることも大切だと思いました」

 その後、靖隆さんの会社が業務拡大し、人手が足りなくなったため、JOYZOに正社員として入社した。当然ながら、家庭と仕事の両立は大変だった。

「私の仕事が忙しくなると、当時3才の末っ子が爪を噛むようになったんです。両手の爪がなくなるほど爪を噛むのが癖になりました。寂しいからなのかと悩みました。

 でも、クヨクヨしすぎても仕方ない。私が仕事で出張するときは末っ子も必ず同行させるようにして、一緒に過ごしました。そして、私が楽しく頑張っている姿を見せるようにしたら、子供たちも『ママ頑張って!』と応援してくれるようになりました。

 家庭でも仕事でも全力で向かうけど、ダメだったらそれはそれ。じゃあこうするか!と頭を切り替えて、『頑張りすぎない』ことを心がけています」

 琴絵さんは、夫の会社に入った当初、やはり苦労した。

◆2拠点活動と夫婦の重要性

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