妊娠がわかったときは「100%うれしかった」(和さん。2020年1月)

妊娠がわかったときは「100%うれしかった」(和さん、2020年1月)

 和さんは8月30日に腫瘍切除の手術を受けた。6日後に病理検査の結果が出た。

【2018年9月5日(水)】
〈16時頃におと(父)とまま(母)だけ呼ばれて、先生と話をした。なんかあったんだろうな。とは予想してたけど、ガンだったとは。まま号泣。おとも困ってるかんじ。まだ21才なんだけどなあ。なんで私だけこうなんだろ? 今日は何してても涙出るわ。うけとめきれない〉

 和さんはすぐに将一さんに報告し、別れを切り出した。

「『いつまで生きられるかわからない私ではなく、健康な彼女を見つけてください』と言いました。本心でした。抗がん剤治療が始まったら、もっと大変なことになるだろうし、遠藤さんの時間を犠牲にしてしまう。だから別れるならいましかない、と思ったんです」

 だが、将一さんは即答。

「あなたがつらいことを忘れられるように、楽しい気持ちと幸せな気持ちで上書きする」──その日から、二人三脚の闘病がスタートした。和さんは東京の病院で検査入院後、医師からすすめられ、思い悩んだ末に手術を決意した。しかし、手術はできなかった。がんが進行していたのだ。

「開腹後、がん細胞が広がっている『腹膜播種』という状態だったら手術は中止します、と事前に言われていました。麻酔からさめたら母と妹が号泣していて『ああダメだったんだな』と悟りました」

 診断結果は「ステージIVの大腸がん」。これには将一さんも動揺したという。

「先月の時点ではステージIIだったのに……。ステージIVって進行の終わりの方なんですよ。その日は一緒に泣きました」(将一さん)

このサイズの服を着ている頃、生きてるのかな

 行動は早かった。和さんはがん告知を受けた際、抗がん剤により生殖機能が悪影響を受ける可能性について説明された。これを受け、2018年10月17日には卵子の凍結保存をしていた。2013年に日本生殖医学会がガイドラインを正式決定したことで、現在、未婚女性が将来の妊娠に備えて卵子凍結を行うことが認められている。

「本当は妊娠率が高いとされる受精卵を保存したかったのですが、当時は結婚していなかったのでかなわず、せめて卵子だけでも保存しておこうと思ったんです。子供を持つ夢をどうしても諦めたくなかった」(和さん・以下同)

 ふたりは2019年12月21日に結婚式を挙げ、同日婚姻届を提出して正式な夫婦となった。

「とにかく早く出産したくて、結婚の2か月前から抗がん剤を中止していました。薬の影響で止まっていた生理は、結婚式の翌日に再開。夫と体外受精の説明会に行き、人工授精を始めようとしていたときに、自然妊娠が発覚しました。これ以上ないタイミングで来てくれて、生まれる前からできすぎな子ですよね」

 しかし、喜びもつかの間、病魔は待ってくれなかった。

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