出産と卵巣摘出手術を終え、退院を控えて(2020年10月)

出産と卵巣摘出手術を終え、退院を控えて(2020年10月)

 まだ言葉は出ないものの、叫んだり、“あうあう”と口を動かしてみたり、成長期まっただ中だという。

「“そうかそうか”って聞いてあげると笑うんですよ。もうそれがかわいくて。早くおしゃべりしたいです。一緒に本を読めるようにもなりたいな」

 和さんは「本は心を耕す」という恩師の言葉が忘れられないという。娘にも本好きになってほしくて、書店に行っては絵本を集めている。

 がん闘病中の育児。苦労がないわけがない。思い通りにいかないことばかりだ。

「本当は母乳で育ててあげたかったんですけど、母乳が出てこなかったんです。搾乳器を使ってもダメでした。おっぱいが張って、吸わせたい感覚はあったんですけど……。出産後、私は死にかけていたので母乳を作る余裕がなかったんだと思います。娘には『ごめんね』という気持ちでいっぱいです」

 和さんは2020年7月9日に娘を出産。将一さんは当初、「子供がほしい」という和さんに大反対した。

「ぼくは、妻自身の体を優先してほしくて。生きるか死ぬかの問題ですよ? 延命の方法を探っている中で『子供がほしい』と言われても……。『そんなこと言ってる場合じゃない、まずは抗がん剤治療をしっかりしてほしい。妊娠と出産で、これ以上体に負担をかけてほしくない』というのがぼくの気持ちでした。回数を覚えていないくらい何度も大げんかをしました」(将一さん)

 医師からは「お母さんがいない子になる準備と覚悟ができるなら、出産はできないことはない」とまで言われたという。それでも和さんは意志を曲げなかった。

「『お母さんになる』が私の将来の夢でした。『出産できる状況があるのに子供を諦めるなんて、死んでも死にきれない』と夫を説得しました」(和さん)

 和さんの熱意に将一さんは根負け。だが出産までには想像を絶する困難があった。

なんで私だけこうなんだろ?

 和さんは1997年3月20日、青森市生まれ。高校卒業後、2016年に飲食店で働き始めた。将一さんは6才年上で、札幌市生まれ。大学卒業後、建築系の大手企業に就職し、2013年に青森に配属されて和さんと巡り会った。ふたりの出会いは2016年10月、青森市内のダーツバーでのことだった。

「遠藤さん(夫)は、なんだかいいにおいがするし、顔が歌手の森山直太朗似ですごくタイプだったんです。会ったその日に絶対につきあいたいと、一目惚れでした(笑い)」(和さん・以下同)

 その日から、和さんの猛アタックが始まる。デートに誘うのは自分から。好き嫌いが多い将一さんの口に合う料理を研究し、部屋まで押しかけて振る舞った。恋は実った。出会ってわずか10日後に交際が始まった。2017年10月には、和さんの両親への挨拶をすませて同居を開始。ふたりの交際は順調に進展したが、病魔の影は和さんに忍び寄っていた。2018年8月25日のことだった。

「激しい腹痛で、朝から救急外来に行きました。エコーや採血などの検査を受けたものの、『便秘』との診断でした。ところが翌日夜、実家に戻っていたら、また激痛がきた。救急病院に運ばれ内視鏡検査を受けたところ、大腸に腫瘍があることがわかったんです」

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン