厳しい稽古は先代(左)から受け継いだ伝統だった(時事通信フォト)

厳しい稽古は先代(左)から受け継いだ伝統だった(時事通信フォト)

「一門を越えた結束が必要」

 2年に1度の理事選は、5つある一門が年功序列で事前に候補者を調整する“無投票”が長く続いていた。そうしたなか、貴乃花親方は二所ノ関一門を飛び出し、37歳の若さで理事選に出馬する。

「当選ラインに届かないとみられていたが、当時の安治川親方(元幕内・光法)や立浪親方(元小結・旭豊)が一門の意向に反して貴乃花に投票し、当選を果たした」(同前)

 その余波は大きかった。

 無記名投票の“造反者狩り”だ。所属する一門の意向に逆らったことが判明した安治川親方は廃業危機に追い込まれ、本誌の直撃に「辞めたくない。今の一門に残れればいいが……」と絞り出すように答えていた(その後、名跡交換などを経て貴乃花部屋に移籍)。

 無傷では進めなかったが、改革には勢いがあった。貴乃花親方は理事選の3か月後にはすでに、「相撲界を変えるには、一門を越えて結束した親方衆の絶対数が必要なんです」と訴えていた(週刊ポスト2010年5月21日号)。

 その後も4期連続で理事当選を果たし、2014年には協会が正式に「貴乃花一門」を認める。後に関取となる貴景勝(2014年入門)、貴源治、貴ノ富士(2013年入門)が加わるなど、部屋は活気づいていた。

 ただ、そこに少しずつ影が差し始めるのも、この頃のことだった。

大鵬と北の湖の死

 大きな転機は、2015年11月場所中に北の湖理事長が亡くなったことだ。

 部屋の所属力士の大麻使用で一度は辞任した北の湖親方が、理事長に復帰したのは2012年のこと。そのタイミングで貴乃花親方は、大阪場所部長の要職に抜擢される。時の理事長が後ろ盾となったこともあり、「貴シンパの若手親方は一門を越えた新勢力として広がりを見せ、その数は全親方の半数に迫っていた」(協会関係者)とされる。

 その北の湖理事長が亡くなり、後任として八角親方(元横綱・北勝海)が理事長に就任。反貴乃花派の一門に支えられて権勢を振るうようになり、潮目は大きく変わった。

 前後して、貴乃花親方を支える人たちが亡くなったり、協会を追われたりしたことも大きかった。

「貴の乱」での貴乃花親方の集票をサポートした元横綱・大鵬は2013年に亡くなり、2015年6月には貴乃花部屋付きの親方だった元大関・貴ノ浪(当時の音羽山親方)が43歳の若さで急性心不全により死去。貴乃花親方は後ろ盾と部屋の番頭格を失った。

「貴の乱の直後に発覚した野球賭博事件で、元関脇・貴闘力(当時の大嶽親方)と大関・琴光喜が解雇されたことも大きい。貴闘力は側近だし、琴光喜も理事選で貴乃花親方に票を投じていた。当時から〝貴シンパだから重い処分になった〟と言われており、貴乃花親方は理事会で琴光喜の処分軽減を進言し、受け入れないなら協会を去ると退職願まで出したが、聞き入れられなかった」(同前)

 そうして櫛の歯が欠けるように、周囲から人がいなくなっていった。

 そして、2017年11月場所前の秋巡業で“鳥取事件”が起きる。

関連記事

トピックス

世界中を旅するロリィタモデルの夕霧わかなさん。身長は133センチ
「毎朝起きると服が血まみれに…」身長133センチのロリィタモデル・夕霧わかな(25)が明かした“アトピーの苦悩”、「両親は可哀想と写真を残していない」オシャレを諦めた過去
NEWSポストセブン
人気シンガーソングライターの優里(優里の公式HPより)
《音にクレームが》歌手・優里に“ご近所トラブル”「リフォーム後に騒音が…」本人が直撃に語った真相「音を気にかけてはいるんですけど」
NEWSポストセブン
キャンパスライフをスタートされた悠仁さま
《5000字超えの意見書が…》悠仁さまが通う筑波大で警備強化、出入り口封鎖も 一般学生からは「厳しすぎて不便」との声
週刊ポスト
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
エライザちゃんと両親。Facebookには「どうか、みんな、ベイビーを強く抱きしめ、側から離れないでくれ。この悲しみは耐えられない」と綴っている(SNSより)
「この悲しみは耐えられない」生後7か月の赤ちゃんを愛犬・ピットブルが咬殺 議論を呼ぶ“スイッチが入ると相手が死ぬまで離さない”危険性【米国で悲劇、国内の規制は?】
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン
折田楓氏(本人のinstagramより)
「身内にゆるいねアンタら、大変なことになるよ!」 斎藤元彦兵庫県知事と「merchu」折田楓社長の“関係”が県議会委員会で物議《県知事らによる“企業表彰”を受賞》
NEWSポストセブン
笑顔に隠されたムキムキ女将の知られざる過去とは…
《老舗かまぼこ屋のムキムキ女将》「銭湯ではタオルで身体を隠しちゃう」一心不乱に突き進む“筋肉道”の苦悩と葛藤、1度だけ号泣した過酷減量
NEWSポストセブン
横山剣(右)と岩崎宏美の「昭和歌謡イイネ!」対談
【横山剣「昭和歌謡イイネ!」対談】岩崎宏美が語る『スター誕生!』秘話 毎週500人が参加したオーディション、トレードマークの「おかっぱ」を生んだディレクターの“暴言”
週刊ポスト
“ボディビルダー”というもう一つの顔を持つ
《かまぼこ屋の若女将がエプロン脱いだらムキムキ》体重24キロ増減、“筋肉美”を求めて1年でボディビル大会入賞「きっかけは夫の一声でした」
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン