CASE2より
柴門さん自身、第一線で漫画を描きながら、二人の子どもを育ててきた。
「昭和の終わりに子どもを産んだので、子育てしたのは平成でしたけど、昭和の考えそのものでしたね。子どもが18才になるまでは、何があっても、嘘でもいいから家族のかたちは守り抜こう。嘘でもいいから、ってちょっと語弊がありますけど(笑い)、子どもの前では、できるだけ、ただの明るいお母さんでいようと思っていました。
朝食とお弁当だけはつくろうと決めていました。『これだけやって、もし子どもがグレたらしょうがない』って、自分への言い訳なんですけど、決めたルールを守りました。何しろ考え方が昭和なものですから、保育園に預けることもせず、仕事をセーブして、午後5時には仕事場から家に戻るようにして、それまでの時間は母と夫の母に協力してもらって何とか切り抜けました」
ちなみに夫で漫画家の弘兼憲史さんは「昭和の男」でもあり、子育てにはほぼ、タッチしなかったそうだ。
いまは長女、長男ともに独立して結婚し、長女のところに3才、1才の孫がいる。
「娘には、『早く保育園に預けたほうがいいよ』って言いました。娘にも仕事がありますし、私は母たちのように預かれませんからね(笑い)」
【プロフィール】
柴門ふみ(さいもん・ふみ)/1957年徳島県生まれ。1979年漫画家デビュー。1983年『P.S.元気です、俊平』で講談社漫画賞、1992年『家族の食卓』『あすなろ白書』で小学館漫画賞を受賞。代表作の一つ『東京ラブストーリー』はドラマ化され社会現象にもなった。ほかに『同・級・生』『Age,35』『非婚家族』『恋する母たち』など数多くの作品が映像化されている。『結婚の嘘』『老いては夫を従え』『オトナのたしなみ』などエッセイ集のファンも多い。
取材・構成/佐久間文子 撮影/藤岡雅樹
※女性セブン2022年8月11日号
