2008年に起きた四川大地震が地震予測へと進むきっかけに(写真=Imaginechina/時事)

2008年に起きた四川大地震が地震予測へと進むきっかけに(写真=Imaginechina/時事)

 この手法が、「ピンポイント予測」の元になったのだ。だが、そんな郭博士の地震予測の研究に壁が立ちはだかった。

「リモートセンシングを使った研究は少数派で見向きもされず、期待した反響はありませんでした。それに中国では政府に予測を報告することはできても、その予測を一般に公開し、直接人民に伝えることができないんです。これでは人命を守ることはできないと思いました」(郭博士)

 このまま中国で研究を続けるべきか否か──そう悩んでいた頃、リモートセンシングで世界的に著名な村井氏が日本で地震予測をしていることを知った。

「地震の多い日本なら、私の予測を直接国民に伝えることができるはずだし、同じ専門分野である村井先生も地震予測の研究をしているなら一緒にやりたい。そう思って、2018年に、村井先生に“日本のJESEAで働きたい”というメールを送ったんです」(同前)

 郭博士から突然メールが届いた村井氏は当初、こう思ったという。

「優秀な博士を多数輩出している中国科学院出身ということでしたが、見ず知らずの人だし、中国の大学教授並みの給与はとてもじゃないけど払えないと、JESEAへの就職の申し出を断わったんです」(村井氏)

 それでも、郭博士は諦めなかった。

 月10万円でもいいから働きたいと頼むとともに、衛星画像で日本に地震の前兆が現われるたびに村井氏に報告した。2019年11月に中国・桂林で開かれた国際会議に村井氏が出席した際は、1300km以上離れた河南省から村井氏に会いに行き、一緒に仕事をさせてほしいと直訴した。村井氏が述懐する。

「初対面の郭博士は、非常に人柄が温厚で好印象でしたが、やはり採用できないと断わった。しかしその後も、何度もメールが届きました。熱意に負け、研究員として招き入れることを決めました」

 こうして郭博士は、2020年末に妻子とともに来日。JESEAの主席研究員となって以降、アジア全域の衛星画像データを毎日解析し、村井氏とともに新規予測法の開発に勤しんでいる。村井氏が語る。

「郭博士は、衛星画像データの解析だけではなく、予測の精度を高めるための斬新なアイデアを次々と提案してくれています。長年、私は研究者として歩んできましたが、そのなかでも裸で議論をできる人はなかなか現われませんでした。

 郭博士は本音で議論できる稀有な存在です。30以上の歳の違いなんて関係ない。対等な研究パートナーです。この研究コンビなら、さらに新しい予測法を開発できる」

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