25才で即位後、さまざまな苦難に直面し、乗り越えてきたことでエリザベス女王は至高の存在になった。精神科医の渡邊宏行さんが言う。
「本来なら身内の問題はメンタルヘルスに悪い影響を与え、うつや不安障害になる可能性が充分あります。しかし女王は身内にさまざまな醜聞を抱えながら、自分の気持ちをコントロールできた。彼女は個人としての顔と公人としての顔を上手に切り替えることで、ストレスを軽減してきました」(渡邊さん)
「君臨すれども統治せず」を掲げ、決してお飾りではなく、今際の際まで公務と向き合ったエリザベス女王は「真の女王」であり、妻であり、母であり、国民の希望であり続けた。
女王が生涯貫いた前向きな姿勢には、国を超えて時代を超えて学ぶことが多い。70年にわたってイギリス国家の君主に在位したのは、エリザベス女王をおいてほかにはおらず、“特別な存在”だった。
年を重ねるにつれ体には不調が表れ、それに拍車をかけるように、息が詰まるような問題ばかりに直面した。それでも、エリザベス女王の人生のラストステージに悲愴感は一切漂わず、「理想的な死」を迎えることができた。
要因は、決して節制した生活を続けてきたことのみにとどまらない。襲いかかるプレッシャーやストレスに対して、時に笑い飛ばし、時に目を背ける?だからこそエリザベス女王は、微笑みをたたえながら最期を迎えられた。その生きる術は、“特別な存在”ではない私たちにとって、遠い異国のものではない。
※女性セブン2022年10月13日号