堰を切ったようにお話に夢中になられていた
1泊2日の沖縄訪問を通して、雅子さまは限られた時間で心を尽くされた。だが、四半世紀ぶりの訪問を待ちわびていた人たちにとっては、どこか物足りなさも残った。「交流の場」をかなり制限せざるを得なかったからだろう。
コロナ禍以降、両陛下は2年8か月にわたり地方公務を自粛されてきた。エリザベス女王の葬儀に参列されるため、9月にイギリスに足を運ばれたことで地方公務も“解禁”に至ったが、10月1日、国民体育大会の開会式出席のために訪れた栃木県は、当初の予定を変更して日帰りに。今回の沖縄訪問も、慣例的には2泊されるところを、1泊での帰京となった。その背景には、新型コロナの感染拡大防止がある。
「両陛下がいらっしゃるとなれば、人が集まってしまうことは目に見えています。仮にそういった場でクラスターが発生しようものなら、国民の安寧を祈る皇室の役割とは真っ向から反する。それだけに、両陛下がより慎重になられている側面はあると思います」(別の皇室記者)
冒頭に記したように、那覇空港近くには100人近い奉迎の人が集まった。
《マスク着用 三密回避 声掛けはしないでください》
警戒にあたった警察官は、そう書かれたプラカードを手にしていた。
「飛行機での地方訪問の場合、空港にはおおむね両陛下を歓迎する横断幕が掲げられますが、見当たりませんでした。横断幕があると、訪問を知らなかった人も、両陛下を一目見たいと集まってしまうリスクに配慮したのでしょう。那覇空港からの出発時も、両陛下を乗せた車は人が多くいる空港ビルの前は通らず、工事関係車両の出入り口を通りました」(前出・皇室記者)
そもそも、両陛下の沖縄訪問を事前に知らなかった県民も多いという。
「宮内庁から新聞やテレビメディアに対し、沖縄訪問に関する事前報道はできるだけ控えるようにとお願いがあったというのです。そのため、初日の来県の様子をニュースで知った県民が多かったのか、滞在2日目の方が、沿道に集まる人の数が増したように感じました」(前出・皇室記者)
お帰りの際も、那覇空港への道中に集まった人々に、警察官が「離れてください」「距離をあけてください」と再三呼びかける光景もあった。コロナ対策としては成功なのだろう。しかし、地方訪問は地元の人たちと交流する貴重な機会でもある。
「コロナ禍により経済活動が停滞し、生活が苦しくなった人も増えています。気持ちが落ち込んでいるからこそ、直接、両陛下を見て、存在を近くに感じるだけで心が軽くなる人もいます。暗くなりがちな社会を明るくすることも、皇室の大きな使命です。
にもかかわらず極端な厳戒態勢を敷くのは、皇室と国民の心の距離を遠くしてしまいかねません。そもそも、出入国時の条件を緩和するなど、ウィズコロナに舵を切る政府のスタンスとも足並みがズレているように感じられます」(皇室ジャーナリスト)