「天罰を受ける民族」
日本への差別的な批判では韓国も負けていない。日韓関係改善路線を進める尹錫悦・政権は、海洋放出は「科学的に問題はない」と冷静な対応だが、野党や市民団体、韓国メディアやネットでは日本叩きが沸騰している。
漁業が中心の済州島の19の市民団体が参加する脱核・気候危機済州行動は、「今回の日本政府の核汚染水海洋投棄決定はいかなる理由であれ納得できないテロの宣言」との声明を出し、韓国キリスト教教会協議会も「自国の利益のため他国に被害を転嫁する犯罪国家に回帰する反時代的な決定である」との緊急声明を出した。国内環境団体は、日本政府が「人類に向けた核テロ」を犯そうとしていると糾弾している。
放出が開始された日には、抗議するためにソウルの日本大使館に侵入しようとした大学生16人が逮捕された。
韓国のテレビ各局が「福島原発汚水明後日から放流」などのニュースをネットで流すと、「韓国国民の健康や水産物に関わる商人たちを皆殺しにする行為!」「今後、あの島国から放射能汚染水が流れ出る限り、日本産食品や工業製品はボイコットだ」「政権が変わって後日、南北統一が安定したら日本と一戦交えないとな」といったコメントがあふれた。X(旧ツイッター)にも、「チョッパリ(日本人の蔑称)政府、消え失せろ! 汚染水飲んでろ。韓国に来るな」「日本は滅びるだろう。彼の民族によって殺された人は何人いるだろうか。天罰を受ける民族という書き込みが目立った。
韓国の特徴は、そうした日本批判が「親日」の尹政権への批判に結びつくことだ。
革新系のハンギョレ新聞が「大統領室予算で直接『日本汚染水の安全』映画を制作」と報じると、「こいつらの脳の構造は本当に気になる。おかしくなったんじゃないのか」と尹大統領批判のコメントが相次いでいるし、「反日」の最大野党・共に民主党の院内代表も日本の海洋放出と日米韓が安全保障協力を結んだことをからめて、「最も近い隣国の国民を傷つけ、国益を侵害する国と軍事協力を結んだことに国民が同意できるのか」と尹政権批判のボルテージをあげている。
しかし、そうした中韓の国民の認識やメディアの論評は科学的根拠のない言いがかりだ。