コテコテの大阪弁を話す設定のトミ役を受けるかどうか、当初は小雪にも迷いがあったという。
「演じる役としては興味があるものの、大阪弁が不安で、感情を乗せることができるかどうかがわからないと悩まれていた。そこで、役をやるやらないは置いておいて、方言指導の先生に大阪弁のレクチャーを受けていただくことになりました。
その後、小雪さんから『自分の感情的な思いを大阪弁で表現することはとても難しいということがわかった』と伝えられたので、これはダメか……と思ったのですが、『でも、この役をやりたいです』と言っていただいたのです」(福岡氏)
自分の子供に見えてきた
結核を患う愛助を演じた水上と小雪は初共演だったが、本当の親子のように通じる部分があったようだ。福岡氏が続ける。
「水上さんが小雪さんの息子さんに少し似ているそうで、『初めて会った気がしない』『不思議と自分の子供に見えてきた』と言っていました。思っていた以上に2人が親子に見えたのが良かったです。
一方、撮影が一緒になることが多かった東京支社長の坂口役の黒田有さん(メッセンジャー)は、小雪さんが大女優だし役柄的にも色々と怒られるので、少しビビッていました(笑)。トミが坂口に向かって『一番嫌いなんや』を3連発するシーンがありましたが、本気で怒るととても凄みがあって怖いのに、お茶目にも見える。そうしたトミの絶妙なバランスを小雪さんが表現されています」
スズ子とトミの対面シーンはまだわずかだが、田幸氏はこう考察する。
「スズ子には父親の家から追い出された生みの母(中越典子、44)や育ての母(水川あさみ、40)がいて、梅丸少女歌劇団の先輩でトップスターの大和礼子さん(蒼井優、38)は子供を産んだ直後に亡くなってしまった。スズ子の周りにはいろんな母親が登場し、それぞれの在り方がスズ子の人生にも影響を与えてきました。“姑”のような立ち位置のトミさんも、最愛の人である愛助を女手一つで育ててきた母親であり、これからスズ子に影響を与える一人になる気がします」
前出の福岡氏は「まだ詳細は明かせませんが」と前置きしてこう語る。「これから先、スズ子とトミさんの2人が対峙するシーンが出てきます。スズ子に対して『歌ってほしい』と背中を押すシーンで、お互いの気持ちがわかり合える場面になっています。それまで2人が一緒のシーンがほとんどなかったので趣里さんもこのシーンにはすごく感じるものがあったとおっしゃっていた。ぜひ楽しみにしていただきたいです」
※週刊ポスト2024年1月26日号