楽天時代に一緒にお立ち台に立った田中将大と山崎武司氏(産経新聞社)
野球エリートの初の挫折
2023年10月に右肘関節鏡視下クリーニング術を受けた田中は、昨シーズンはわずか1試合しか一軍の試合に登板できず、黒星がついた。初めてシーズン未勝利に終わり、楽天からは制限を超える減額提示を受け、自ら自由契約となる道を選んだ。
「将大にとって、ヒジの痛みは文字通りの苦痛だったんだけれども、手術して投げられるまで回復した。そして、ようやく登板にまでこぎつけたのに、わずか1回のチャンスで判断され、事実上の戦力外通告を受けてしまった。あれでは選手は到底納得できないと思います。野球人としてエリート街道を歩んできた将大にとって、初めての挫折でしょう」
田中は今季初先発となった4月3日の中日戦で586日ぶりに勝利投手となり、通算勝利数を198にまでのばした。前日、前々日の同カードで解説の仕事を担当していた山崎は、田中が先発する3戦目もバンテリンドームを訪れ、田中を激励しようかとも考えていた。しかし、山崎の足は向かなかった。
「あいつにとっては勝負の年。その初登板の日に変なプレッシャーはかけたくなかったし、煩わしいことはしたくなかった。あいつと会って話すのはもっと落ち着いてからでいいと、あえて行きませんでしたね」
2度目の先発となった4月18日の横浜DeNA戦では、2回もたずに6失点を喫し、ノックアウトされた。そして、二軍で再調整することに。
「全盛期からすれば腕の振りが弱くなっているのは否めない。現状の真っ直ぐだと、相手バッターから空振りが奪えないですよね。真っ直ぐにスピードがなくなれば、ツーシームやスライダー、スプリットも効いてこないですし、変化球を痛打されてしまう。晩年にさしかかった将大にはテクニックでかわしていくようなピッチングも必要になってくるでしょう」
