芸能

『あまちゃん』を支える大人計画役者の魅力を専門家が解説

 平均視聴率が過去最高の23.9%を記録するなど、ブームが続いているNHK連続テレビ小説『あまちゃん』。このドラマを支えているのが名脇役たちだが、なかでも人気劇団「大人計画」の役者陣の存在感が際立つ。脚本を手がける宮藤官九郎氏も同劇団所属で、松尾スズキ(喫茶店のマスター・甲斐役)、荒川良々(副駅長・吉田正義役)、皆川猿時(教師・磯野心平役)、村杉蝉之介(カメラ小僧、アイドル評論家・ヒビキ一郎役)など個性的な役者がそろう。彼らは『あまちゃん』にどういった効果をもたらしたのか? コラムニストのペリー荻野さんが分析する。

 * * *
『あまちゃん』がこれまでの朝ドラにない盛り上がりを見せているのは、大人計画の役者の存在が大きいでしょう。彼らは癖のある演技をするので、いるだけで不思議な存在感がある。その存在感が『あまちゃん』の脚本の面白さにマッチしていると思います。

 彼らの演技はどこかユニークですが、わざと笑わせようとするものではありません。仮にお笑い芸人が役者として『あまちゃん』に主要なメンバーで出演したとして、面白いキャラクターになっていたでしょうか? おそらくあまりハマらなかったと思います。それは小劇場での舞台を数多くこなしている大人計画の役者とお笑い芸人では、演技における面白さの“質”が違うからです。大人計画の役者には、笑いを醸し出す雰囲気というか、ジワジワとにじみ出てくる面白さがあり、それが彼らの魅力だと思います。

『あまちゃん』で彼らのセリフは意外に多くありませんが、強烈な個性を発揮しています。もちろん、役者個人のキャラクターもありますが、クドカンの脚本が彼らに合わせて書かれている、つまり当て書きなので、その個性を引き出せているということもあるでしょう。

『あまちゃん』でも、配役にそれなりに役割があって、クドカンがストーリーのカギとなる場面で、大人計画の役者を信頼して託しているのがわかります。例えば、副駅長(荒川良々)は大事なシーンで必ず目撃者になる。アキが種市先輩(福士蒼汰)にふられたあと、ユイちゃん(橋本愛)が種市先輩の胸ぐらをつかむところを見てしまうのも副駅長ですし、ユイちゃんがグレてしまったのを初めて目撃したのも彼。喫茶店のマスター(松尾スズキ)は、アイドルを目指していたころの春子(小泉今日子)と太巻(古田新太)のやりとりや、GMTを辞めてからのアキ(能年玲奈)の成長など、ストーリーのポイントとなる場面に居合わせています。

 それをいちいち言葉にしない演技が、面白さを増しています。過剰に演技をして説明の芝居もできるのに、それをせずにマスターのようにただ黙っているとか、副駅長のようにしゃべらないでただ陰から覗いているとか、そういった演技をする。決して派手なリアクションをするわけではないんですよね。喫茶店で太巻と春子が言い合いになったシーンでも、今日こそマスターは何か言うだろうなと思って見ていても、結局、何も言わない(笑い)。そこが面白い。静かでありながら存在感がある芝居というのはやっぱり大人計画の役者だからこそできることだと思います。

 NHKの朝ドラに、これだけ大人計画の役者が出たという意外性もあったと思います。深夜のドラマや小劇場で出るような役者が朝ドラの15分の枠の中で、ひねった芝居をチラチラと見せるから、それが面白さにつながっています。朝ドラでやるからこそ、普段、クドカン作品や大人計画の役者を見たことがない人にも興味をもってもらうことができ、逆に、朝ドラを見ていなかった舞台好きの人も取り込むことができたのでしょう。

関連記事

トピックス

靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン