「実は先日、カミさんが好きだという『寺内貫太郎一家』を初めて見たんですよ。すると雷親父の小林亜星さんを皆でもり立てて、最後は母親役の加藤治子さんが万事丸く収める。でも結局は妻の賢さや優しさに甘えてるだけなんだよね。
ドラマとしては面白いけど、今はああいう父親を守ってくれる女性はいませんね。『オレについて来い』的な旦那芸も大抵は中途半端で、女性に柔らかく接する会話力すら磨かない儒教国日本では、だから男が先に“心の動脈硬化”を起こすんです。
崇徳は俺? よく言われる(笑い)。ホスト芸って点は似てなくもないけど俺の方が情けないね。でも何であれ、結局男が女にしてやられるのは、ホスト芸も旦那芸も同じです(笑い)」
お喋りや喧嘩の絶えない彼女たちを、〈女たちが姦(かしま)しい〉と優しく見守ることのできる、鷹揚でしなやかな男による男のための実用書。そんな楽しみ方も許してくれそうな、懐の深い“小説”である。
【著者プロフィール】藤田宜永(ふじた・よしなが):1950年福井県生まれ。16歳で上京。早稲田大学第一文学部中退後渡仏、エールフランスに勤務。1980年帰国。1986年『野望のラビリンス』で小説デビュー。1995年『鋼鉄の騎士』で日本推理作家協会賞、1996年『巴里からの伝言』で日本冒険小説協会最優秀短編賞、1999年『求愛』で島清恋愛文学賞、2001年『愛の領分』で直木賞。著書多数。この7月に『夢で逢いましょう』(小社刊)が文庫化。妻・小池真理子氏と軽井沢在住。176cm、58kg、AB型。
(構成/橋本紀子)
※週刊ポスト2014年7月18日号