そしてテレビ朝日の女子アナも、よく産んでいるという印象がある。アナウンサー同士の結婚がもっとも多い同局では、部内に出産しやすいムードがあるのかもしれない。やはり、同じような環境で、同じような事情を共有できることが強みとなるのであろう。
では日本テレビはどうだろうか。昨今、同局は、20代の女子アナに大きなチャンスを与えているように見える。『ZIP!』には13年入社の郡司恭子アナと中島芽生アナ。『スッキリ!!』には14年入社の岩本乃蒼アナ、『NEWS ZERO』には12年入社の久野静香アナと杉野真実アナ。杉野アナは人気番組『世界まる見え!テレビ特捜部』のアシスタントも務めている。
「好きな女子アナランキング」第一位をひた走る三ト麻美アナは00年入社。『ヒルナンデス!』を毎日仕切り、バラエティー番組からも引っ張りだこだ。今年入社の、あの笹崎里菜アナにも『シューイチ』というレギュラー番組がある。11年入社の徳島えりかアナも、『行列のできる法律相談所』はじめレギュラー番組5本をもつ売れっ子だ。
一方、ママウンサーとして成功しているのは『news every.』の16時台をNEWSの小山慶一郎と共に仕切っている鈴江奈々アナぐらいしか浮かばない。ニュースでは、森富美アナが午前中や早い午後に出てくるが、出戻りの葉山エレ―ヌアナはほとんど見かけない。
また産休中の延友陽子アナにしても、佐藤良子アナや杉上佐智枝アナにしても、もともと、それほど目立つタイプではなかったせいか、TBSの40代ママウンサーに比べると地上波で見ることは少なくなった。
その理由はどこにあるかというと、あまりにも“前例”が少なすぎるからだろう。石川牧子元アナ、鷹西美佳元アナ、笛吹雅子元アナ、そして現役最年長の井田由美アナら、大先輩たちの多くは独身であり、もちろん、子供もいない。
その時代の女子アナとしては、こちらのほうがスタンダード。他局を見ても、TBSの吉川美代子元アナや、フジテレビの益田由美元アナ、城ヶ崎祐子元アナ、桜井郁子元アナらは、結婚経験はあっても出産経験はない。
出産がキャリアを絶対的にストップさせることになりかねない時代だったからこそのことであり、女子アナのみならず、一般企業でも、この年代のキャリアウーマンにはママが極端に少ない。
こうした先輩がバリバリと仕事をし、キャリアを重ねているのを目の当たりにしていれば、そのスタイルに憧れる人は多いだろうし、「もしも産みたかったら退社する」という選択になってもしかたがあるまい。
日テレが、一気に女子アナの若返りをはかった背景には、結婚も出産も当分しないであろう若手を積極的に起用し、時間をかけて育てていこうという現れなのだろう。番組の視聴率を安定させるために、それは正しい選択だ。
視聴者とて、「ママウンサーが多いから、この局を多く見よう」と思ったりはしないだろう。しかし、これがママタレなら話は別。生活情報番組やバラエティー番組でママタレは数字をもっている。ここがママタレとママウンサー、最大の違いかもしれない。何より、視聴率で、三冠、四冠を続けているのは日本テレビである。
ママウンサーの急増は、女性としては応援したいし喜ばしいことだと思うが、テレビ局の本音は少々異なるのかもしれないと思う今日このごろである。