いまのように顔だけが重要ポイントである時代ではなく、声の良さ、滑舌、カ行、サ行の無声音がしっかりできる(いま、これができるアナウンサーは本当に少ない)ことなどが絶対条件とされた時代の“職人”ともいうべきアナウンサーとして、おまきさんは自信をもっていたと思われる。
さらに平野早苗さんは、ダイアナ元妃が亡くなったとき、武藤さんと共に夏休みをとっていてウィーンに居たとき、局から電話があったと…。一瞬で戦闘モードになり、完璧にメイクを済ませ、スタンバイをした武藤さんに、プロ根性を見せつけられたという。
ダイアナ元妃は日本でももっとも人気が高い有名人の一人であり、ファンも多かったので、英国王室ネタは度々ワイドショーで取り上げられていた。まるでダイアナさんが武藤さんに対し、「貴女に取材をしてほしいの」と願ったかのようなエピソードだ。
ワイドショーのリポーターが番組内で「専門分野をもつこと」の難しさと大切さを教えてもらったというのは“相撲”の横野レイコさん。小柳美江さんは、『とくダネ!』に出演するたびに、おまきさんから長文のメールをもらったという。
MCの小倉氏からサブMC、アシスタントからリポーター、さらにはスタッフにまで叱咤激励の長文メールを送り続けていたというおまきさん。
「ありがたい」と思う反面、「煙たい」と思っていた人は少なからずいたと思うのである。
35分もかけて武藤まき子さんを偲んだ『とくダネ!』だが、昔みたいに、週に何度もおまきさんが出てくるようなことは、もう何年もない。今年でいうと、天皇陛下の生前退位についてスタジオで着席して丁寧な解説と武藤さんなりの想いを語ったことと、平幹二朗さん告別式の際の、いわゆる“葬式リポート”が目立った出演だったように思う。
もう一つ、件の平野早苗さんが話していたことで、すごく理解できたのは、「(出演していない私に、おまきさんが)『くやしくないの?』『くらいつきなさい』と言ってくれた」…である。