ライフ

【著者に訊け】卯月妙子氏 『人間仮免中つづき』

【著者に訊け】卯月妙子氏/『人間仮免中つづき』/小学館/1300円+税

 小学生のときに統合失調症を発症した卯月妙子さんは、以後、精神病院への入退院を繰り返してきた。2007年には歩道橋から飛び降りて自殺を図り、一命を取り留めたものの顔面が崩壊、右目の視力を失う。

〈おいら〉と恋人〈ボビー〉との出会い、〈おいら〉が歩道橋から飛び降りるまでのいきさつ、その後の回復過程を描いたコミックエッセイ『人間仮免中』は大反響を巻き起こす。それから4年半。卯月さんが、ボビーとのその後を描いた待望の続篇『人間仮免中つづき』を発表した。

〈北海道の、ある障害者福祉施設にお世話になったわたしはボビーと5年間、離れて暮らしました〉〈持病の統合失調症は、過去に例がないほど悪化しました。陰性症状に突入し、最後の2年間は寝たきりに近い状態でした〉

 行きつけの飲み屋で知り合ったボビーと25歳年下の〈おいら〉。〈おいら〉の自殺未遂でも別れなかった二人だが、〈おいら〉の病気が悪化、いったん離れて暮らす選択をする。勤め先を退職し、〈もうじき古希〉のボビーが北海道にやってきて、二人が再び一緒に暮らし始めるところから漫画は始まる。

 前より太った〈おいら〉が〈既に85キロ…〉と白状すると、ボビーは〈どっから見ても善人ですって、ツラになりやがってよ!!/俺、あなたの昔のヘンに妖艶だった顔より、今のほうが好きだなあ〉と笑い飛ばす。

「私、押しかけ女房なんです。思いを告白して、ボビーのうちへ行った5日後には、タンスと電気釜と衣類一式、全部ヤマト運輸で運んで引っ越してきちゃった。会社から帰ってきたボビーは唖然として、ひとこと『いいタンスだな』って。もう逃げられないと思ったんじゃないですか(笑い)」

 押しかけられたボビーは献身的に彼女の世話を焼く。それは北海道での同棲中も変わらない。ひどい寝汗を拭いたり、眠りにつくまで足を揉んだり。統合失調症についての知識を深め、〈おいら〉が〈頭が3つある犬〉の幻覚を見ても、糞尿を垂れ流しても驚かない。生き物を殺せず、〈ゴキブリも殺さないで飼っていい?〉という〈おいら〉に、驚きつつも〈んーまー別にゴキブリぐらいいいけど……〉というボビー。

「ちっちゃいころから動物や虫が大好きで、うちじゅう、虫や動物だらけだったんです。保育園のころ先生たちがつけたあだなが『虫めづる姫君』でした」

 二人はハエに〈小町〉と〈次郎〉という名前をつけていつくしむ。秋が来て、小町と次郎が死んだあと、小さいハエが飛んでいるのを見て〈どっかにウジが湧いてるんだ!!〉と命がつながったことを喜び、泣く二人。

関連記事

トピックス

モデル・Nikiと山本由伸投手(Instagram/共同通信社)
「港区女子がいつの間にか…」Nikiが親密だった“別のタレント” ドジャース・山本由伸の隣に立つ「テラハ美女」の華麗なる元カレ遍歴
NEWSポストセブン
米大リーグ、ワールドシリーズ2連覇を達成したドジャースの優勝パレードに参加した大谷翔平と真美子さん(共同通信社)
《真美子さんが“旧型スマホ2台持ち”で参加》大谷翔平が見せた妻との“パレード密着スマイル”、「家族とのささやかな幸せ」を支える“確固たる庶民感覚”
NEWSポストセブン
高校時代の安福容疑者と、かつて警察が公開した似顔絵
《事件後の安福久美子容疑者の素顔…隣人が証言》「ちょっと不思議な家族だった」「『娘さん綺麗ですね』と羨ましそうに…」犯行を隠し続けた“普通の生活”にあった不可解な点
デート動画が話題になったドジャース・山本由伸とモデルの丹波仁希(TikTokより)
《熱愛説のモデル・Nikiは「日本に全然帰ってこない…」》山本由伸が購入していた“31億円の広すぎる豪邸”、「私はニッキー!」インスタでは「海外での水着姿」を度々披露
NEWSポストセブン
優勝パレードには真美子さんも参加(時事通信フォト/共同通信社)
《頬を寄せ合い密着ツーショット》大谷翔平と真美子さんの“公開イチャイチャ”に「癒やされるわ~」ときめくファン、スキンシップで「意味がわからない」と驚かせた過去も
NEWSポストセブン
生きた状態の男性にガソリンをかけて火をつけ殺害したアンソニー・ボイド(写真/支援者提供)
《生きている男性に火をつけ殺害》“人道的な”窒素吸入マスクで死刑執行も「激しく喘ぐような呼吸が15分続き…」、アメリカでは「現代のリンチ」と批判の声【米アラバマ州】
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン