稀勢の里のいない春巡業で圧倒的な一番人気となっているのは、同じ田子ノ浦部屋の弟弟子で5月場所に大関獲りのかかる関脇・高安だ。握手やサイン、記念撮影に気前よく応じる巨体の周りには、100人近い行列ができ、30分以上もファンサービスに努めていた。

「ほんまに毛むくじゃらなんやな!」

 スー女(相撲女子)たちの歓声が飛び交う。

 しばらくすると日馬富士、鶴竜の両横綱をはじめ上位陣が顔を見せ、幕内力士の稽古が始まる。稽古は、負けて転がされ泥だらけになった力士が次々に代わっていく勝ち残り方式。勝てばその分だけ稽古量が増えるわけだ。石浦(前頭11)、宇良(前頭12)といった売り出し中の小兵力士が土俵に上がるたびに歓声が沸く。一方、モンゴル人横綱2人は稽古の土俵には上がらず、影が薄い。

 稽古後半に声援を独占していたのはやはり高安で、4回、5回と勝ち残るたびに「たかやすぅ!」の声がかかる。

 稽古が終わると、地元の幼稚園児、小学生らとの「こども相撲」や力士が七五調の囃子歌を披露する「相撲甚句」、珍しい決まり手、禁じ手、反則を紹介する「初切(しょっきり)」が演じられ、また館内が沸く。

 幕内力士の土俵入り、横綱土俵入りに続いて、“本番”ともいえる力士たちの取組があり、午後3時頃の弓取式までが一連のプログラムとなる。それを終えると力士や親方、行司、呼び出しなど250人を超える一行は、7台のバスに分乗して次の巡業地へと向かう。

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