もはや何が正解かわからない。そこで、再び安楽死取材をはじめるきっかけとなったスイスの自殺幇助団体「ライフサークル」のエリカ・プライシック女医に会いにいった。彼女は当初、私にこう語りかけていた。
「あなたには、色んな人を取材して、中立な立場で執筆してもらいたいわ。世界には、私だけでなく、たくさんの医師や患者がいるの」
年間80人以上の患者を幇助する彼女は、プロフェッショナルである。だが、女医に安楽死の矛盾を告げると、その彼女ですら私の前でこう嘆くのだった。
「私だって、すべての幇助が正しいとは思わない。時には、罪悪感を持つことだってある」
もっとも新しい例は、この日の朝、女医が自殺幇助したドイツ人女性についてだった。
「彼女の病気は、全身麻痺でしたが、本当はまだ生きることが可能でした。病に倒れてからの2年間は、地獄の生活だったことでしょう。しかし、そこから20年間は、おそらく精神的な安定期に入ったと思うのです。彼女が死んだ時、私は恋人が泣きわめく姿を目の当たりにしました。この段階で幇助するのは間違っていました」
彼女に最大限の敬意を払いつつも、私はこう思った。後悔しても死人は帰らない。