芸能

松本人志世界はお笑い原理主義 笑いというナイフで刺し合い

松本人志世界とは(イラスト/ヨシムラヒロム)

 従来のテレビ番組と同じ方法でコンテンツを制作しても、ネット配信では人気を集められないと言われる。ところがテレビで人気を集めたノウハウを持つ芸人・松本人志が発案した『HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル』は、Amazonプライム・ビデオというネット配信の形をとりながら、現在シーズン4を数える人気番組となった。イラストレーター、コラムニストのヨシムラヒロム氏が、松本人志はなぜ、ネット配信でも多くの支持を集めることが出来たのかをつづる。
 * * *

 忘れもしない、2016年11月30日。

『HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル』の初回が配信された。以後、『ドキュメンタル』は各所で話題となり、現在シーズン4が展開中。

 この『ドキュメンタル』云ってしまえば、芸人のにらめっこ大会。一部屋に、10名の芸人を6時間軟禁。そこで、笑わせ合いを行う。バラエティ番組がショーアップされたプロレスだとしたら、『ドキュメンタル』はなんでもありのケンカ。

 参加費は100万円。最後まで笑わずに、サバイブした芸人が優勝賞金1000万円をゲット。ギリギリの精神状態で行われる笑いの戦場、誰しもが衝撃を受けること請け合い。

 しかし、これは素人の捉え方。

『ドキュメンタル』こそ芸人の日常とも云える。いや、全ての芸人と括るのは危うい。ただ、松本人志周辺の芸人の日常であることには間違えない。

 水道橋博士著「藝人春秋2」に、松本人志のあるクリスマスの過ごし方が描写されていた。さぞ豪華なモノだろうと期待してい読み進める。だが、そこで知ったのは衝撃的な事実。

 構成作家・倉本美津留が持ってきた大喜利を木村祐一、千原ジュニアとともに回答する。

 松本人志世界は、お笑い原理主義が蔓延る。「おもろいやつ」が一番偉い。その思想は、小学生時代から確立していた。同級生とコンビを組み、お楽しみ会で漫才を披露していた話は語り草。

 当時から自分の仲間を除いたクラスメイトの笑いのセンスをdisっていたと云う。

 小学校高学年の男子が勘違いした黒歴史のようなエピソード。しかし、松本の場合は天下をとっているわけで。

 その批評眼に狂いがなかった。いや、そうとしか書きようがない、勝っている官軍だから仕方ない。

 過去、アントニオ猪木が「いつ何時、誰の挑戦でも受ける」と吐いたが、松本も同様。子供時分から、表でも裏でも連戦連勝を続けたゆえにカリスマ。

 私生活での勝利は、テレビにも反映される。だから、松本人志は常に偉そうで。舎弟達は「松本さ?ん、松本さ?ん」と太鼓を持ち続ける。

『ドキュメンタル』からは、そんな芸人の強さを測ることが可能だ。素の状態の強さ、それこそクラスで誰が一番面白いかを争っている状態に近い。
無闇に笑いをとりにいってもスベるばかり。適切なタイミングで、正しい行動を起こしたものに笑いの女神は微笑む。

 最初に行うべきは、自分がアクションを他の芸人に示すこと。しかし、弱い芸人はその機会さえつかめない。やられるがまま、笑ってしまい、美味しいシーンがないまま敗退なんてザラ。

 強弱がハッキリと分かる『ドキュメンタル』は面白いだけでなく、恐ろしくもある。

 ここでの活躍によって、表バラエティ界での地位が交代。そんな可能性すら秘めている。

 つまりはガチ。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン