『笑っていいとも グランドフィナーレ』でタモリ、明石家さんま、とんねるず、ウッチャンナンチャン、ダウンタウン、爆笑問題、ナインティナイン、が大集合し、勝負を繰り広げた。生放送、誰が笑いとったか明確な状況下。松本が吠え、太田がとぼける。少しでもスキを見せれば、イジられるなかでの戦い。
松本は「昔のお笑いの世界は真剣で斬り合っていた」と例える。スタッフ、タレントにも派閥があったピリついた時代。『笑っていいとも グランドフィナーレ』は、殺伐とした空気感がテレビの画面に出た奇跡の瞬間であった。
余談だが、テレビの申し子達を仕切ったのが「笑い」への飢餓感が薄い爆笑問題の田中だから面白い。
それ以降、久しく見ない芸人同士のヒリヒリとしたやりとり。そこのみにスポットライトを浴びせたのが『ドキュメンタル』である。
人を笑わせる行為に呪われた人々が、磨きに磨いた”笑い”というナイフでグサグサと刺し合う。
お笑いファンが求めた「真剣で斬り合う時代の再現」を超える。事務所の境目が薄くなくなったゆえに、可能となった忖度なきドリームマッチ。
松本人志は、映画製作で人生史上最も大きなスベりを披露。一連の作品群は、松本には珍しい寒いモノであった。映画を通して、世界的に才能を認めさせる目論見は失敗に終わった。
だからと云って、“笑い”の造形力が目減りしたわけではない。
大喜利、笑ってはいけない、すべらない話と新しい笑いのカタチを作ってきた松本。その真打が私的笑いと云える『ドキュメンタル』なのである。
テレビの笑いを薄口に感じる人は、絶対に見るべきコンテンツだ。