売野:82年組の登場でパラダイムシフトが起こって、それ以前のアイドルは少し古く見られるようになった。その影響で、1980年デビューの河合奈保子さんのプロデューサーが実験的に作曲を筒美京平さん、作詞を『少女A』の売野に頼み、1983年6月の『エスカレーション』が生まれたんです。

「モラルを誰でも心の中で乗り越えている」というコンセプトで、セクシャリティに踏み込みました。彼女のイメージとのギャップが大きくて批判もあっただろうけど、売り上げ枚数は彼女のシングルの中で1番でした。

太田:82年組は他のアイドルの歌にも影響を与えていたんですね。彼女たちのデビュー前後から、アイドルに興味を持つ世代が広がり始めたような気がします。

 1970年代までは高校生で卒業するという風潮がありましたが、僕が大学2年の1980年くらいから『よい子の歌謡曲』というアイドル同人誌が大学の書籍部に堂々と置かれるようになり、衝撃を受けました。「三田寛子の『駈けてきた処女』って井上陽水の作曲なのか」と作家陣にも敏感になっていった。

売野:高度成長を経て、経済的に成熟した1980年代を迎え、パトロン的なものがアイドル文化に繋がったこともあるでしょうね。

太田:1970年代に築かれたアイドル文化が、東京(=TOKIO)がテーマパークのような華やかさと軽さを醸し出し、消費の誘惑が漂い始めた1980年代に花開いた。その中心に、花の82年組が存在していたと思います。

●松下賢次(まつした・けんじ)/1953年3月2日生まれ、東京都出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、1975年にTBS入社。プロ野球やゴルフなどの実況を中心に活躍。1986年10月2日から2年3か月にわたって『ザ・ベストテン』の司会を務める。自身の結婚式には中森明菜、近藤真彦、田原俊彦などが出席した。

●売野雅勇(うりの・まさお)/1951年2月22日生まれ、栃木県出身。上智大学文学部英文科卒業後、コピーライター、雑誌編集長を経て、1981年に作詞家デビュー。1982年に中森明菜『少女A』でブレイクし、チェッカーズ『涙のリクエスト』、郷ひろみ『2億4千万の瞳』、荻野目洋子『六本木純情派』などヒット曲多数。

●太田省一(おおた・しょういち)/1960年11月13日生まれ、富山県出身。社会学者、著述家。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。アイドルや歌謡曲、お笑いなどに造詣が深い。著書に『アイドル進化論』(双書Zero)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩選書)、『木村拓哉という生き方』(青弓社)など。

※週刊ポスト2018年1月26日号

関連記事

トピックス

「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年12月3日、撮影/JMPA)
《曾祖父母へご報告》グレーのロングドレスで参拝された愛子さま クローバーリーフカラー&Aラインシルエットのジャケットでフェミニンさも
NEWSポストセブン
指示役として逮捕された村上迦楼羅容疑者
「腹を蹴れ」「指を折れ」闇バイト主犯格逮捕で明るみに…首都圏18連続強盗事件の“恐怖の犯行実態”〈一回で儲かる仕事 あります〉TikTokフォロワー5万人の“20代主犯格”も
NEWSポストセブン
3年ぶりに『紅白』に出場するKing & Prince
《ボーイズグループ群雄割拠時代が到来》キーワードは「オーディション」と「自由」 メンバー個人での活躍の場も拡大、“脱退組”にも注目
女性セブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《スクープ》“連立のキーマン”維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官が「秘書給与ピンハネ」で税金800万円還流疑惑、元秘書が証言
NEWSポストセブン
2018年、女優・木南晴夏と結婚した玉木宏
《ムキムキの腕で支える子育て》第2子誕生の玉木宏、妻・木南晴夏との休日で見せていた「全力パパ」の顔 ママチャリは自らチョイス
NEWSポストセブン
大分県選出衆院議員・岩屋毅前外相(68)
《土葬墓地建設問題》「外国人の排斥運動ではない」前外相・岩屋毅氏が明かす”政府への要望書”が出された背景、地元では「共生していかねば」vs.「土葬はとにかく嫌」で論争
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
《雅子さま、62年の旅日記》「生まれて初めての夏」「海外留学」「スキー場で愛子さまと」「海外公務」「慰霊の旅」…“旅”をキーワードに雅子さまがご覧になった景色をたどる 
女性セブン
清水運転員(21)
「女性特有のギクシャクがない」「肌が綺麗になった」“男社会”に飛び込んだ21歳女性ドライバーが語る大型トラックが「最高の職場」な理由
NEWSポストセブン
高校時代の安福久美子容疑者(右・共同通信)
《「子育ての苦労を分からせたかった」と供述》「夫婦2人でいるところを見たことがない」隣人男性が証言した安福容疑者の“孤育て”「不思議な家族だった」
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン