他の回では、鈴木亜美をゲストに招いた2人。ふとした話の展開から、山本が鈴木に高級自転車をプレゼントする流れに。それをきっかけにプライベートもでも遊ぶようになった2人。山本は鈴木にマジで惚れる。そして、メールで告白。見事にフラれる。

 全盛期の極楽とんぼは、加藤が山本に無茶振りを連発。その最たる例が前述した芸能人に告白するネタだった。江角マキコ、鈴木亜美以外にも白石美帆、松浦亜弥、梅宮アンナにもアタック。もちろんフラれていた。

 思春期の男子が抱えるリビドー。身もふたもない言い方をすれば「芸能人とセックスをしたい」という虫がいい望みを抱いてしまうどうしようもなさ。この幼稚なマインドを山本は、本音と芸のどちらともつかない微妙な位置で体現していた。口だけではなく実際に試みる、アホな男子リスナーにとってこれほど面白いことはない。スケールの大きな悪ふざけを実現してくれているのだから。だがおそらく、女性や良識的な人たちから見たら軽蔑しかない。芸よりも犯罪に近い行為と見られても仕方がない。

 類を見ない“芸能人にフラれる”スタイルで笑いをかっさらった極楽とんぼ。この粗暴な芸風と山本の罪との相性は最悪だ。セミドキュメンタリーではあっても、ドキュメンタリーではないと安心して見ていた山本のフラれ芸。爆笑をとること必須なこの芸は、一線を越えたらおしまいの諸刃の剣。今の山本がやれば、事件を思い起こさせる。当然、視聴者は無邪気に笑えなくなる。

 10年ぶりに復活を果たした極楽とんぼ。2017年4月からAbemaTVでレギュラー番組『極楽とんぼKAKERU TV』も始まった。

「あの笑いで今の僕は笑えるのか」、と全く期待せず放送を見た。結果、良い意味で予想は裏切られる。番組内で繰り広げられたのは、極楽とんぼらしい芸だった。『ボーリングで負けたコンビはへそピアス』という地獄のような罰ゲームが用意された勝負をしたり。泥酔した加藤が若者に説教するだけの放送したり。極めつけは、3時間にわたり山本の恋人を探すスペシャルプログラム(もちろんフラれた)。

 懸念したフラれ芸を再び笑うことは出来ないかもしれないという恐れ。それは、笑いで吹き飛ばされてしまった。山本が50歳のおじさんになり、枯れたという部分も大きいだろう。10年の活動停止の間に相方との格差が生まれたこともある。個人的には、山本の反省と芸風の間で揺れる自意識が興味深かった。それこそ極楽とんぼが新たに獲得した芸だとも思った。

 現在、放送中のラジオ番組『極楽とんぼ オレたちちょこっとやってまーす!』(MBS)にて2人は『めちゃイケ』終了後の自らのあり方について語っていた。加藤は制作側に回り、山本をプロデュースした舞台をやりたいと云う。山本はあいも変わらずのほほんとしていた。

 いずれにせよ、極楽とんぼは予想ができない危ない芸人。そして、日本一の格差コンビ。問題児・山本圭壱を抱えた日テレ朝の顔・加藤浩次の“ドキュメンタリー”はまだまだ続く。

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