派手な乱闘や審判への猛抗議も、盛り上げるための演出だ。ファンはいつ乱闘や抗議が始まるかわからないと期待しているから、球場に足を運んでくれるし、試合に集中する。あれはあくまで監督による演技。ワシは客の呼べる役者だったんだよ。その証拠に、ワシは近鉄のタフィー・ローズに抜かれるまで長く退場の日本記録(8回)を持っていたが、大部分は監督時代のものだからね。
乱闘というのはひとつのショーだ。それを真剣になってやるバカはいない。両軍の選手全員が飛び出してきて派手に見えるが、殴ろうとしても誰かが止めてくれるからケンカするのであって、本気で殴ろうなんて思っていませんよ。
それが外国人選手は本気になって乱闘に参加してくるから、おかしなことになってしまう。阪神のバッキー(*1)、巨人のガルベス(*2)がいい例だな。ちなみにワシと外国人の乱闘でいえば近鉄のジム・トレーバーの顔面を蹴った事件があったが、あれは上げていた足の下にアイツの顔が飛び込んできただけだからね。でもあの映像も繰り返しテレビで流され、パ・リーグを盛り上げる一助になっただろう。ガッハッハ。
【*1:1968年9月18日、巨人・王貞治への危険球に激怒してベンチを飛び出した荒川博コーチに、バッキーが右ストレートで応戦。荒川は顔面から流血し、バッキーも右手を骨折する重傷を負った】
【*2:1996年5月1日、ガルベスの投げた頭部危険球に中日の山崎武司が激怒し、マウンドに突進。ガルベスのエルボーで山崎は流血。両軍入り乱れる乱闘に発展し、試合は32分中断した】
●かねだ・まさいち/1933年愛知県生まれ。1950年国鉄入団。14年連続20勝をはじめ、数々の記録を達成。1973年からロッテ監督を務め、日本一にもなった。通算400勝(歴代1位)。
■取材・文/鵜飼克郎
※週刊ポスト2018年6月1日号