芸能

『半分、青い。』脚本家の「神回予告」は禁じ手ではなかったか

展開についての議論も盛り上がった(番組公式HPより)

 昨今の視聴者からみれば、本編の出来不出来のみならず制作サイドの「姿勢」にどこまで共鳴できるか、という点もヒットの重要な要素となろう。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏がNHKの朝ドラについて指摘する。

 * * *
 NHK連続テレビ小説『半分、青い。』もいよいよ残すところ一週間。スタートからの半年間を振り返れば、かなり個性的で珍しい朝ドラだった、と総括できるのではないでしょうか。

 とはいえ前半、鈴愛が漫画家を目指し修業するストーリーは、表面的な新奇さはあってもどちらかといえば「若い主人公が格闘しながら成長していく物語」という意味で従来の朝ドラの路線上にあった。何といっても目を惹いたのが、「秋風羽織」という大漫画家のキャラクター。この人物を作り上げた脚本家・役者・演出家の功績は、とても大きかったと思います。

 豊川悦司演じる秋風先生の言葉は深淵で、説得力が半端なかった。決して上から目線の説教調ではなく、自分自身の苦闘経験を土台に結晶させた人生の哲学をまっすぐ弟子にぶつけていく。それを受け止めた弟子は力を磨き伸びていく。Web上に「秋風先生の名言集」ができてしまうほど、感動的なシーンがいくつもありました。

 そしていよいよ、プロの漫画家となり秋風先生の元を巣立った鈴愛。ところが、あえなく漫画家の道を挫折してしまう。このあたり、NHK朝ドラとしては珍しい展開に。「コツコツと努力する→目的を達成する」という平和的方程式を、このドラマはあっさりと崩したのですから。

 後半は100円ショップの店員、地元でカフェ経営、ベンチャービジネスと鈴愛の仕事はめまぐるしく変わっていく。私生活も結婚、出産、離婚と変転。前半の完成度に比べると後半は断片的な話や登場人物が多く、次々にエピソードが飛び、結局何を描こうとしているのか浮遊している印象があった。

 なぜ前半と後半でこうも違う質のドラマになったのでしょう? 一人の脚本家が書いているドラマだというのに? その意味でもあまり見たことのない「珍しい朝ドラ」だったと言えるでしょう。

 珍しいと言えば、「登場人物」もそうでした。

 今回、いわゆるドラマの中の配役・俳優たちに加えてもう一人、珍しい登場人物が加わりました。「脚本家」自身です。北川悦吏子氏はSNSで逐一ドラマの内容や展開を自ら説明。朝ドラの後続番組『あさイチ』でMCの博多華丸が、ドラマのあまりに早い展開にとまどうコメントをすると、たちまち北川氏がTwitterで反応。「華丸さん、直接、お話したいです!!」などと呼びかける。

関連記事

トピックス

小島瑠璃子(時事通信フォト)
《亡き夫の“遺産”と向き合う》小島瑠璃子、サウナ事業を継ぎながら歩む「女性社長」「母」としての道…芸能界復帰にも“後ろ向きではない”との証言も
NEWSポストセブン
会見で出場辞退を発表した広陵高校・堀正和校長
《海外でも”いじめスキャンダル”と波紋》広陵高校「説明会で質問なし」に見え隠れする「進路問題」 ”監督の思し召し”が進学先まで左右する強豪校の実態「有力大学の推薦枠は完全な椅子取りゲーム」 
NEWSポストセブン
起訴に関する言及を拒否した大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平、ハワイ高級リゾート開発を巡って訴えられる 通訳の次は代理人…サポートするはずの人物による“裏切りの連鎖” 
女性セブン
日本体操協会・新体操部門の強化本部長、村田由香里氏(時事通信フォト)
新体操フェアリージャパンのパワハラ問題 日本体操協会「第三者機関による評価報告」が“非公表”の不可解 スポーツ庁も「一般論として外部への公表をするよう示してきた」と指摘
NEWSポストセブン
スキンヘッドで裸芸を得意とした井手らっきょさん
《僕、今は1人です》熊本移住7年の井手らっきょ(65)、長年連れ添った年上妻との離婚を告白「このまま何かあったら…」就寝時に不安になることも
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
《広陵高校、暴力問題で甲子園出場辞退》高校野球でのトラブル報告は「年間1000件以上」でも高野連は“あくまで受け身” 処分に消極的な体質が招いた最悪の結果 
女性セブン
代理人・バレロ氏(右)には大谷翔平も信頼を寄せている(時事通信フォト)
大谷翔平が巻き込まれた「豪華ハワイ別荘」訴訟トラブル ビッグビジネスに走る代理人・バレロ氏の“魂胆”と大谷が“絶大なる信頼”を置く理由
週刊ポスト
お仏壇のはせがわ2代目しあわせ少女の
《おててのシワとシワを合わせて、な~む~》当時5歳の少女本人が明かしたCM出演オーディションを受けた意外な理由、思春期には「“仏壇”というあだ名で冷やかされ…」
NEWSポストセブン
広陵野球部・中井哲之監督
【広陵野球部・被害生徒の父親が告発】「その言葉に耐えられず自主退学を決めました」中井監督から投げかけられた“最もショックな言葉” 高校側は「事実であるとは把握しておりません」と回答
週刊ポスト
薬物で何度も刑務所の中に入った田代まさし氏(68)
《志村けんさんのアドバイスも…》覚醒剤で逮捕5回の田代まさし氏、師匠・志村さんの努力によぎった絶望と「薬に近づいた瞬間」
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《ずっと若いママになりたかった》子ども好きだった中山美穂さん、元社長が明かした「反対押し切り意思貫いた結婚と愛息との別れ」
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 「石破おろし」の裏金議員「入閣リスト」入手!ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「石破おろし」の裏金議員「入閣リスト」入手!ほか
NEWSポストセブン