おことばが始まって5分半あたりで、2枚目の原稿を読み終えられた。次に3枚目を読まれるはずが、最初の1枚目をめくられたことに陛下が気づかず、再び冒頭部分を読み始められた。

 その時、とっさに動き出されたのは美智子さまだった。かがむように姿勢を低くして陛下に近づかれる。陛下は戸惑いながらも「違う?」と応じられ、美智子さまは小声で「違うんです」と囁かれた。

 美智子さまが手を伸ばされ、御机に置かれていた3枚目の原稿を、資料の中から探された。美智子さまから原稿を受け取られ、取り違えに気づかれた陛下は「あ、そうか」、「どうも、失礼」とわずかに微笑まれながら美智子さまに視線を送り、再びおことばを読み進められた。その間、約10秒だった。

「会場の誰もが陛下が読み間違えられていることに気づいていない中、美智子さまがとっさの判断で動かれた。美智子さまの立ち位置からは、陛下のお手元の原稿は見えません。つまり、原稿を目で追っていて気づかれたわけではなく、原稿がすべて頭の中に入っていたから、手を差し伸べることができたのでしょう」(別の宮内庁関係者)

 おことばは、陛下がご自身の言葉で執筆され、推敲を重ねられたという。

「美智子さまはお側で、推敲を支えられたそうです。だからこそ、瞬時にフォローができたのでしょう。陛下はおことばを、美智子さまが平成2年に詠まれた御歌(和歌)で締めくくられました。陛下にとって、ずっとお側で寄り添われてきた美智子さまの存在がどれだけ大きなものかを感じさせられました」(前出・宮内庁関係者)

 約9年前、美智子さまがテニスで左膝靱帯を痛められて以来、両陛下が並んで歩かれる時は必ず陛下が腕を出し、美智子さまを支えられてきた。

 昨年6月、2泊3日の福島訪問で美智子さまが38度台の高熱を出された。東日本大震災の被災地への陛下在位中最後の訪問であり、美智子さまは体調不良を押して、すべての行事に出席された。帰京し、東京駅のホームの階段を下りられる際、陛下は右手で手すりを持ち、左手で美智子さまを支えて、美智子さまの様子に気を配りながら一歩一歩、ゆっくりと進まれた。

 両陛下が式典で見せられた一瞬の微笑みは、おふたりが手を携え、長い苦難の道を共に歩まれた末にたどり着かれた境地であろう。私たちはこの最後のおことばを語り継いでいかなければならない。

※女性セブン2019年3月14日号

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン