「『アルプスの少女ハイジ』のおんじに似ていると、『泰樹おんじ』と呼ぶファンもいるようですね(笑い)。厳しさもありつつ、なつのよき理解者であり、いろいろなことを教えてくれる頼りがいのある人物。子供を決して下に見ないので、なつにとっては師匠であり、同志といってもいい存在ですね」(木俣さん・以下同)
毎回、「泰樹おんじ」のセリフにホロリとくる視聴者は多い。第4話では「無理に笑うことはない。謝ることもない。」「言い合える仲間がいるだけで人は恵まれとる。」「一番悪いのは、人がなんとかしてくれると思って生きることだ。人は人を当てにする者を助けたりはせん。」などの名セリフがあった。そして、なかでも大きな反響があったのは第8話だ。
《怒りなんていうのはとっくに通り越しとるよ。怒る前にあの子は諦めとる。諦めるしかなかったんだ。それしか生きる術がなかったんじゃ。あの年で。怒れる者はまだ幸せだ。自分の幸せを守るために人は怒る。今のあの子にはそれもない。争いごとを嫌ってあの子は怒ることができなくなった。あの子の望みはただ生きる場所を得ることじゃ》
戦争孤児という身の上のため、普通の子供のように素直な感情を表に出せないなつ。同情し、ただ気を使う周囲の大人と泰樹は一線を画す。そしてなつの胸中をこう代弁する。
「怒れる者はまだ幸せだ」というセリフに木俣さんは「現代性」を読み取る。
「そもそも人が怒ることができるのは、満足や幸せを知っているからとドラマでは語ります。戦後に豊かさを追い求めてバブルが崩壊した今の日本では、何が幸せや満足なのかわからなくなり、怒ることができなくなっています。泰樹の言葉は、未来に希望が抱けず諦めるしかないという現代人の心境を反映している。シンプルでストレートな言葉が好まれる昨今のドラマに珍しい“屈折”したセリフなんです」
※女性セブン2019年5月2日号