イープラスのメリットは単純な航続距離の数値だけではなかった。バッテリーのセル(単電池)数が1.5倍になった恩恵か、山越えや高速走行など高負荷で連続走行したり急速充電を繰り返したりしても、バッテリーの温度が上がりにくくなったのだ。
40kW版の場合、急速充電1回目はいいのだが、それ以上繰り返していると、同じ30分充電でも入る量がどんどん少なくなっていく。これが横浜~鹿児島間で15回も充電をしなければならなくなった最大の要因だった。
イープラスの場合、まず連続走行でもバッテリー温度がほとんど上がらない。同じようなペースで走った場合、リチウムイオン電池のセル数が1.5倍ということは、1セルあたりにかかる負担は3分の2。電気工学的にみると、熱の発生は二乗倍で効いてくるので、1セルあたりの放熱量は9分の4。車重が増えたことを勘案しても、半分といったところだろう。
確かに90kW充電器で一気に大量の電力を電池に蓄えると、さすがに温度は上がる。だが、40kW版がしょっちゅう充電を要したのに対し、次の充電までの時間が格段に長いことと、1セルあたりの熱の発生が少ないことの相乗効果で、走っているうちにだんだんバッテリー温度が下がってくるのだ。
温度が下がりきるわけではないため、2回連続で90kW充電を行うと、2回目は1回目ほど速いペースで充電することはできないのだが、一方で日産ディーラーの一般的な44kW充電器を使うと、温度が少し上がった状態でもフルスピードをほぼ保ったまま30分充電できた。この電池の受け入れ性の高さは、40kWのバッテリーにはなかった特性だ。
エンジン車が重量に対して能力が足りないエンジンを使うとかえって燃費が悪化するように、EVもバッテリー搭載量は多いほうが余裕が出る。イープラスは、その原則をモノで実証するようなクルマであった。