もちろん、ドラマの中に変化もなくはなかった。しかしそれは皮肉なことに、なつ夫婦や職場の「外」にこそ、見てとれたのです。
特にインパクトを残したのが清原果耶さんが演じた妹・千遥の存在でした。戦災孤児のなつと千遥の姉妹は別れ別れに。そして千遥を待っていたのは、なつとはまったく違う苦難に満ちた女の人生でした。
ドラマに出ていた時間だけ計算すれば、なつの「何百分の一」という短さでしたが、しかし17才の清原さん演じる千遥はまさに少女から大人へ、結婚、離婚、苦労しながら小料理屋の女将に収まるまでの時の「変化」をしっかりと演じ切りました。着物姿の千遥の横顔に、陰翳と成熟を感じとった人も多いはずです。
という千遥との対象によって、よけいなつの平板さが浮き彫りになり千遥にドラマをもっていかれた観もある『なつぞら』。ドラマ的展開がもっともっと欲しかった、と嘆くより、節目の朝ドラ通算100作目に17才の新たな才能を発見できた、と喜べばいいのかもしれませんが。
来週から始まる戸田恵梨香さん主演の『スカーレット』では、ぜひ本物の波瀾万丈人生ドラマを見せて欲しいものです。