芸能

『なつぞら』大団円 清原果耶という才能発見を喜ぶべきか

『なつぞら』出演者たち

 半年もの間、見続けてきた物語が終わるとなれば、様々な思いが去来するものである。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が朝ドラについて総括する。

 * * *
 半年間続いたNHK朝の連続小説『なつぞら』も、いよいよ幕を閉じました。なつの祖父・泰樹(草刈正雄)が、最後にしっかりたっぷりと登場し「幕引き役」を担いました。

 最初の「北海道編」で視聴者を感動の渦に巻き込んだ、あの泰樹です。それだけに泰樹が登場すれば視聴者の満足感が高まることは想定内。それでも制作サイドはまだ万全とは思えなかったのか、最終週に北海道出身の人気俳優・大泉洋を「水曜日」にわざわざ出演させるなど、大団円に手を尽くしたようです。

 そして予想通り、泰樹の開拓者魂に拍手喝采の中、半年の幕を閉じた『なつぞら』。しかし、よかったよかったと終わるわけにはいきません。朝ドラ愛を胸に毎日見続けてきた視聴者としては、ここ3ヶ月程の退屈な記憶を全て消し去ることは難しいのです。

 数ある朝ドラの中で『なつぞら』が突出していた点。それは何よりも、後半の間延び具合でした。他を抜きん出る単調さ、類を見ない平板ぶりは、ピカ一でした。

 主人公の奥原なつ(広瀬すず)が北海道から上京し「アニメーターになる」という夢を叶えて以降、あまりにも同じ空気が流れ続けました。

 結婚しようが出産しようが、仕事をバリバリこなそうが24時間寝ないで現場に張り付こうが、なつの人格も表情も目つきもほとんど変化がない。きれいに編み込んだ髪、つやつやした肌、イヤリングに華やかな衣装ばかり目に入る一方、声のトーンもセリフ回しも一辺倒。

 このドラマのモデルとなったアニメーター・奥山玲子さんはオシャレで有名だったとか。それを真似たのか、ファッショナブルな姿は毎日クルクルと変わっていく。しかしそれとは対照的に、なつの感情表現は不動のまま。結果として「着せ替えごっこ」に見えてきて困りました。

 そう、なつはいつだって「お嬢さん」風情で母親にも仕事師にも見えない点が残念でした。

 いや、なつだけではありません。夫・演出家の坂場一久(中川大志)も、ずうっと青年の風貌。父にも中年演出家の風格も漂わず、最後まで「爽やかイケメン」道を貫き通しました。

 あるいは、なつを取り巻く職場の人々もそう。東洋動画からマコプロへと場所だけは変化したけれど、10年単位で時が経過したのがウソのように、ももっちも茜も下山も神地も前と同じ雰囲気。

 ここまで全体が変わらないとなると、毎日見続けるのにはかなりの根気を要します。しかも、なつの周囲の人々はいつも優しくて、なつを手助けし、なつも好きなことを仕事にでき好きな人と結婚し、子供にも恵まれ、ああよかったよかった、という順風満帆の人生。「戦災孤児」という出発点の苦労以外は。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン