クロマティは巨人退団翌年、『さらばサムライ野球』という著書を出版。そこには巨人時代の赤裸々な心境が綴られていた。
「自伝といえば自伝ですが、暴露本と取られても仕方ない内容でした。王貞治監督(当時)や中畑清氏のことは基本的に良く綴っていますが、当時のコーチ陣や原辰徳のことは辛辣に書いている部分のほうが多かった」
同書の中でクロマティは、現役時代の原監督への複雑な心境を明かしている。
〈原は相変わらずチームの看板だ。ルックスがよくて、長島(*編注:長嶋茂雄氏)の後継者という謳い文句があるからだが、実力のほうは“まあまあ”だと思う〉
〈原と俺が同じ試合でホームランを打ったとしても、見出しになるのはいつも原だ。俺だって人並みに嫉妬心は持ち合わせている〉
クロマティの在籍7年間を原と比較すると、本塁打と打点は原、安打数はクロウに軍配が上がる。打率3割以上は原が3回、クロウが4回と甲乙つけがたい成績だ。
「そんなクロウからすれば、『なんでマスコミはいつも原ばかり大きく取り上げるんだ』と感じても仕方ないでしょう。これらの文章はまだ優しいほうで、辛辣な言葉も並んでいた。一方で、クロウが原にアドバイスして復調した話も載っています」
原に同情していたことも素直に綴っている。
〈ある意味で、原には本当に敬服する。世間の批判をさらりとかわし、毎日グラウンドに出て黙々とプレーしている。あんな真似ができる選手はそうはいないだろう。とにかく並大抵のプレッシャーではない。まわりの期待が大きすぎるのだ。長島と王が悪しき前例を作ったせいだと思う〉